抄録
肩関節周囲炎患者が訴える痛みは非常に複雑で,理学療法場面において,評価および治療介入の選択に難渋する。疼痛の要因となりうる多くの因子の中で,肩峰下滑液包は,解剖学的・関節運動学的特性から疼痛好発部位として知られるが,同部の所見を簡単な整形外科的テスト等で精査することは非常に困難であるとされている。今回我々は,肩関節周囲炎患者の疼痛除去を目標に,理学療法評価をベースにクリニカルリーズニングを行い,医師との連携の中で肩峰下滑液包注射のタイミングを決定した3例を経験した。今回の方法により,従来までの報告と比較し,円滑かつ早期に除痛を図ることが可能であった。肩関節周囲炎の痛みを理学療法士が精査できるような理学療法評価プロトコルを確立し,エビデンスに基づいた介入方法を確立する上で,本報告ではその一助となる知見が得られた。