抄録
両膝関節全人工関節置換術術後より,長期的な両膝関節痛,膝の不安定感を自覚し,歩行や趣味の踊りが困難になった症例である。評価結果より,両膝関節共に不安定性に加え,過伸展を呈しているといった身体機能的特徴が認められた。また動作パターンにおいても膝関節屈伸筋群の出力のimbalanceが認められた。これらの身体的特徴と運動学的特徴の相互作用が膝関節痛の原因と考えた。筋活動パターンに着目し,異常な筋活動パターンを修正するアプローチを行うことで両膝関節痛の軽減と共に,膝の不安定感の訴えの消失が見られた。静的な支持機構の破綻を伴う症例においても,関節の動的安定化に焦点を置き,治療構築を行っていくことが重要である。