理学療法 - 臨床・研究・教育
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講座
多関節動作としてのヒト立位バランス制御
笹川 俊
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2021 年 28 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

ヒトの立位姿勢は,狭い支持基底面,高い身体重心位置,柔らかい関節,という構造的特徴ゆえに不安定であり,姿勢を保持するためには,中枢神経系による能動的な制御が必要不可欠である。中枢神経系による立位バランスの制御則を解明することは,科学者の知的好奇心を充足させるだけに留まらず,幅広い臨床応用の可能性を有するという点からも重要な研究課題であり,一世紀以上に渡り,精力的な研究が展開されてきた。立位バランスの制御則を研究する際には,ヒトの身体を,足関節を中心に回転する倒立単振子として近似する手法が一般的である。しかし,近年では,安静立位バランスの制御は多関節動作の一種である,という考えが浸透しつつある。本稿では,ヒト立位バランスの多関節制御に関して,下肢関節間の運動学的協調,下肢関節間に生じる力学的相互作用など,多関節動作に特有の制御上の問題に議論の焦点を置きつつ,最新の研究動向を解説する。

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© 2021 社団法人 埼玉県理学療法士会
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