2024 年 31 巻 1 号 p. 75-78
【はじめに】歩行時の膝前内側部痛に伏在神経膝蓋下枝の関与が疑われた症例を経験した。【症例記述】本症例は歩行時の膝前内側部痛により連続歩行は80 mが限度であった。理学所見より同神経領域のTinel徴候と表在感覚鈍麻,同神経領域における挫創部周囲の皮膚,皮下組織に滑走性低下を認めた。【考察】本症例の歩行時痛は伏在神経膝蓋下枝領域における皮膚,皮下組織の滑走性低下部位に反復的な神経伸張ストレスが歩行中に加わり,伏在神経膝蓋下枝に過剰な剪断ストレスが生じたことで惹起されたと考える。これらに対し,IPB周囲の皮膚,皮下組織とIPB間の滑走性改善を図ることで歩行時痛は改善し,1 km以上の連続歩行が可能となった。【まとめ】膝前内側部痛に伏在神経膝蓋下枝の関与が疑われる場合,同神経領域の皮膚,皮下組織の滑走性低下にも着目して介入する必要がある。