日本糖尿病理学療法学雑誌
Online ISSN : 2436-6544
糖尿病が随意運動を制御する中枢神経に与える影響
村松 憲玉木 徹生友 聖子
著者情報
キーワード: 糖尿病, 運動野, 皮質脊髄路
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 2 巻 1 号 p. 74-82

詳細
抄録

【緒言】糖尿病患者には下肢筋力の低下やバランス障害などの運動障害が生じ,その原因として糖尿病性末梢神経障害や筋実質の障害がよく知られている.しかし,近年,末梢神経障害や筋障害だけでなく身体運動を制御する中枢神経系もまた糖尿病の影響を受け,それらの異常が運動障害の原因となる可能性が明らかになってきた.本総説では特に糖尿病に関連して生じる大脳皮質運動野や皮質脊髄路などの随意運動の制御に関わる中枢神経の異常に着目し,最新の知見をまとめる. 【糖尿病患者を対象とした研究】糖尿病患者を対象にした研究はMRIや電気生理学的手法を用いて行われ,大脳皮質運動野や皮質脊髄路の体積減少や微細構造の変化と,運動野の興奮性低下,可塑性の減少,皮質脊髄路の神経伝導速度低下などが生じることが明らかにされた. 【糖尿病モデル動物を対象とした研究】糖尿病モデル動物を用いた基礎研究では,腰髄以下に投射する皮質脊髄路に優位な軸索変性と興奮伝導障害,運動野後肢領域を中心とした運動野面積の減少が生じることが知られている. 【結論】糖尿病によって生じる随意運動を制御する中枢神経系の障害は糖尿病患者に生じる運動障害の原因を理解する上で新しい視点を与えるものであり,運動障害との関連について今後の研究が望まれる.

著者関連情報
© 2023 日本糖尿病理学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top