日本糖尿病理学療法学雑誌
Online ISSN : 2436-6544
糖尿病性末梢神経障害に対する運動療法の最新知見
鈴木 啓介
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 2 巻 1 号 p. 83-93

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抄録

糖尿病性末梢神経障害(diabetic peripheral neuropathy:DPN)は糖尿病に合併する最も頻度の高い合併症である.DPNは感覚運動神経障害を基盤として下肢機能障害や動作障害へと発展し,生活の質(Quality of Life:QOL)の低下を招く.運動療法はDPNに対する非薬物療法の1つとして期待が高まっており,様々な効果について報告されてきている.有酸素運動は神経の構造と機能を改善し,神経障害の兆候と症状を改善する.また,有酸素運動は神経機能だけではなく心肺機能,代謝機能の改善が見込め,日常的な身体活動への参加が促進し血糖コントロールの向上につながる.レジスタンス運動は,筋力や関節トルクを向上させ,動作機能を改善する可能性がある.有酸素運動とレジスタンス運動,バランス運動,運動感覚トレーニングなどを組み合わせた複合運動は,血糖コントロールや神経機能,静的動的バランス機能,動作機能,QOLなどの向上が期待できる.DPNに対する運動療法のエビデンスが徐々に蓄積されてきており,理学療法士が積極的に関わり,適切な運動療法が提供されることを期待したい.

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© 2023 日本糖尿病理学療法学会
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