抄録
【背景】糖尿病足病変発症予防期における理学療法介入の医学的根拠は乏しい.本研究では,理学療法士が治療手段として一般的に用いることができる自作インソールと足関節背屈運動が胼胝部足底圧に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】前足部および母趾に胼胝を有する糖尿病患者22名を対象に通常の歩行,自作インソールでの歩行,足関節背屈可動域運動後の歩行の3試行で胼胝部の足底圧,足圧中心(center of pressure: COP)を測定した.また足関節可動域運動後に関節可動域(Range of motion: ROM)が改善する群,しない群に分け足底圧の変化量を比較した.
【結果】通常歩行と比較して自作インソール(p < 0.01),足関節背屈運動後(p = 0.03)ともに有意に胼胝部足底圧が軽減した.足関節背屈運動後のROM改善の有無による足底圧の変化量は,両群間に有意差を認めなかった.また通常歩行と比較し,足関節背屈運動後のCOP最大前方移動量は有意に増加した(p = 0.017).
【考察】自作インソールにおける除圧効果は構造的に圧分散を可能にしたものと考える.足関節背屈運動は関節構成体の硬さではなく歩行中の足関節運動を改善させ,COPをより前方へ移動させることで除圧効果を得たと考える.