日本糖尿病理学療法学雑誌
Online ISSN : 2436-6544
抄録
「重複する障害を持つ糖尿病患者」―どう診る,どうする,どう繋ぐ―
小山 昭人
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 2 巻 Supplement 号 p. 1

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抄録

患者の治療や療養指導に,院内連携はどこまで対応できているのか.そしてこのような個別性を理学療法士はどう診たらいいのか. また一方で院外地域に目を向けてみると,医師・看護師・栄養士らは,例えば「糖尿病連携手帳」をもって,多職種院外地域連携による糖尿病重症化予防に取組んでいる.その手帳を理学療法士は患者を担当するときに,経過や治療内容,患者が日頃記録している実生活における療養の姿をみて理学療法を展開しているのであろうか.第4版をみてみると,そこには当然であるが「理学療法士」の文字はない.実際に運動を実施した時の歩数や時間などを記録する欄も見当たらない.運動療法の大切さを患者に伝え,持続的なセルフケア行動を支えていくことは私たちの職責である.これまでに築き上げられた連携を支援するこのような手帳などをもっと積極的に取り入れ,患者の実生活により踏み込んだ視点に立って糖尿病理学療法を提供すべきなのではなかろうか.そして糖尿病治療チーム員としてさらなる自覚を持ち,他職種と連携協業し積極的な支援姿勢を提示してゆく必要があるのではなかろうか. 本来理学療法士は糖尿病の発症予防から,併発症である各疾患群,さらには高齢化によるフレイルや併存疾患など,重複した障害をもつ患者に対応するリハビリテーションの提供まで幅広い職域の職種である.糖尿病診療の全体,患者の療養生活全体を俯瞰して,身体活動や患者のQOL 向上,スティグマに対するアドボカシー活動等の観点から,院内連携のみならず地域においても,人と人とを繋ぐ存在となってリードすべく,この新たなニーズに対応できるように行動変容することが今求められている.

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© 2022 日本糖尿病理学療法学会
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