関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 53
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骨関節系
加齢による体組成変化と変形性膝関節症との関連
*渡辺 博史古賀 良生
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抄録

【はじめに】我々は、変形性膝関節症(以下膝OA)の発症・悪化因子として肥満や膝伸展筋力の関連を報告してきた。今回、加齢による体組成変化に着目し膝OAとの関連を検討したので報告する。
【対象】新潟県十日町市松代地区で、2007年住民膝検診に参加した1484名中、体組成測定が可能であった1419名を対象とした。
【方法】対象者全員に、高精度型体組成計DF851(大和製衡社製)で体組成を測定した。また立位膝関節前後X線撮影(以下X線)を行い、膝OAの進行度について検討した。X線膝OA病期は、Kellgrenの分類を参考に5段階とし、整形外科医1名が評価した。左右ともgradeが0、1であった者を非OA群(女性420名、男性405名)、左右どちらかが2以上であった者をOA群(女性395名、男性199名)に分けた。測定された体組成データから体脂肪率、筋肉量、筋肉率、骨量について性別・年代別に比較した。統計処理は、年代別の比較では多重比較検定を、2群間の比較ではMann-WhitneyのU検定を用い、5%を有意水準とした。
【結果】筋肉量・骨量では性別に関係なく非OA・OA群とも加齢に伴い有意な低下を認めた。筋肉率では男性のOA群以外すべてにおいて、加齢に伴い有意な低下を認めた。体脂肪率は性別に関係なく、非OA・OA群とも加齢に伴う変化を認めなかった。2群間の比較で骨量と筋肉量では、女性の60歳代のみにOA群が有意に多い結果であった。筋肉率・体脂肪率は、女性の70歳代、80歳以上、男性の60歳代、70歳代、80歳以上で差を認め、筋肉率ではOA群が有意に低く、体脂肪率ではOA群が有意に高い結果であった。
【考察】一般に加齢に伴い体重は低下し、その組成である骨量、筋肉量、脂肪量等も低下するとされる。今回の結果から筋肉率は加齢変化を認め、体脂肪率では加齢による影響が少ないことは、脂肪量より筋肉量の減少が大きいと示唆された。2群間の比較では女性の60歳代でOA群の筋肉量が有意に多い結果であり、この年代では、筋肉量を含む体重の影響が大きいと示唆された。同対象についての膝伸展筋力測定結果の検討の報告で我々は、女性の60歳代の膝OAが筋力の低下を認めたとしており、この年代の膝OAでは筋肉量が多いのに筋力低下があり、痛み等の筋力発揮を抑制する因子の影響が大きいと考えられた。女性の70歳以上、男性の60歳以上では、OA群の筋肉率が有意に低く、筋力低下との関連性が示された。 今回の結果から女性の60歳代では、十分に筋力発揮できる状態を考慮することが重要と考えられた。

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© 2009 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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