関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 96
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骨関節系
肩関節可動域の改善に遅延したギランバレー症候群の一症例
*長沢 和典仁科 哲雄
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抄録

【はじめに】ギランバレー症候群の症例報告は、学会発表・ジャーナル・文献などで数多くみられているが、関節可動域を最たる問題点とした症例が報告されていることは少ない。今回、肩関節可動域の改善に遅延した症例を経験し、良好な結果を得たので報告する。尚、発表することに対しては同意を得た。 【症例】53歳、女性。2007年6月発症。発症後、6ヶ月経過した12月当院受診。主訴として、両側肩関節可動域制限、制限位における痛みがみられた。 【経過】受診当日より理学療法開始。初期評価時、関節可動域は右側肩関節屈曲自動115°/他動120°、外転70°/85°、外旋20°/25°、内旋25°/30°、左側屈曲120°/125°、外転70°/80°、外旋25°/30°、内旋35°/40°だった。又、肩甲骨内転・下制・下方回旋においても軽度の可働制限がみられた。痛みは、可動域制限位でみられた。筋力は、肩関節可動筋でMMT4レベルだった。治療は、肩甲上腕関節・肩鎖関節・胸鎖関節・肩甲胸郭関節に対して関節モビリゼーション、肩関節屈曲・外転・外旋・内旋に作用する拮抗筋に対してストレッチ、肩甲帯に対して軟部組織モビリゼーションを行った。治療開始後、可動域は徐々に変化がみられた。他動運動では、両側内旋・左側外旋5ヶ月,右側外旋・左側屈曲7ヶ月、右側屈曲8ヶ月、両側外転9ヶ月で全可動域可能となった。自動運動では、3ヶ月経過時には日常生活に支障をきたさない程に改善していたが、12ヶ月経過時にてほぼ全可動域可能となった。肩甲骨の動きは、1ヶ月で自動運動にて可動制限がみられなくなった。 【考察】肩関節可動域制限の原因として、関節包内運動が円滑に行われていなかったこと、軟部組織の柔軟性が十分得られていなかったことが考えられた。可動域が改善するに伴い、結髪動作・結帯動作も徐々に正常となっていった。又、筋力exを特に積極的に行わなくても筋力の回復がみられたことが、ADLを容易に拡大できた一因とも考えられた。痛みも可動域が改善するに伴い軽減していき、全可動域獲得後は、訴えがほとんどみられなくなった。 【まとめ】ギランバレー症候群は予後良好な疾患であり、約80%は6ヶ月以内に治癒するといわれている。しかし、約20%は何らかの障害が残るとされている。本症例においても、当院受診時、発症後6ヶ月経過していたので、可動域の改善に困難を要することが懸念されたが、徐々に変化がみられていった。よって、回復期以後においても、継続的に理学療法を行ったことが有効であったと示唆された。

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© 2009 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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