関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 97
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骨関節系
バッティングパフォーマンスの向上を試みた一症例
*江原 大輔中川 和昌今野 敬貴松本 稔
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抄録

【はじめに】
 高校硬式野球部員のバッティングパフォーマンス向上を目的に評価,トレーニング指示を行い,若干の知見を得たので報告する.
【対象及び方法】
 対象は高校2年生(16歳)の男子野球部員(右投左打,身長182.0cm,体重77.5kg)で,野球歴は9年,ポジションは投手兼内野手であった.対象者の身体機能評価に加え,パフォーマンス評価としてロングティーバッティング(静止球,10球)の飛距離を計測し,12日間の介入前後でその変化を比較検討した.尚,今回の介入に先立ち本人及び指導者に十分な説明をし,同意を得た.
【初期評価(主な問題点)】
 身体機能は骨盤のマルアライメント,体幹深層筋の弱化による体幹の不安定性を認めた.体幹右回旋運動は体幹の屈曲・右側屈運動を伴い,胸椎での回旋割合が多かった.バッティングの飛距離は平均値が52.8±17.6m,最高値が68.6mであった.バッティングとして動作はテイクバックの右下肢挙上時に腰椎の屈曲・右側屈位を認め,スイングは前述の体幹機能と同じ特徴を呈していた.
【介入内容】
 直接的なバッティング動作指導は実施せずに,自主トレーニングとしての運動を指導した.内容はストレッチポール等を用いた体幹のスタビライゼーション,胡座位での体幹深層筋トレーニング,胸椎の伸展運動・伸展位での回旋運動等である.実施頻度は毎日で週2回合計4回程チェックした.
【最終評価】
 身体機能はアライメント,弱化筋の反応が改善され,体幹右回旋運動は体幹伸展・左側屈運動を伴う右回旋運動に改善された.バッティングの飛距離は平均値が70.5±13.6m,最高値が80.7mでともに増加した.動作は右下肢挙上時のマルアライメント,スイングの回旋運動が機能評価同様に改善された.
【考察】
本症例のテイクバック動作は右下肢挙上時に腰椎の屈曲・右側屈位を認め,結果的に右足部接地時には既にスイングが始動し,いわゆる体が開き,タメのない状態でエネルギー伝達の破綻が起きていたと考えられた.このことから,問題点はテイクバック動作時の体幹のマルアライメントだと考え,動作修正を目的に腹横筋・腹斜筋・骨盤底筋群等の体幹筋に対するトレーニングを指導した.結果,テイクバック動作のアライメントが修正されたことで,円滑な捕手方向への重心移動とタメが獲得され,効率的なスイング(腰椎の伸展・左側屈・右回旋)が可能となった.これらにより体幹機能の改善が効率的なエネルギー伝達を可能にし,飛距離の増加要因の一つになったと考える.今回のような短期間での介入によっても改善が見られたことから,継続的に実施する事でパフォーマンスの向上に繋がる事が期待できる.

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© 2009 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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