関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 9
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口述発表1(神経系)
脳卒中片麻痺患者におけるDual task条件下での歩行 ‐自由会話と口頭指示が歩行に与える影響‐
*野口 涼太桑原 雅之
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キーワード: Dual task, 脳卒中, 歩行
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抄録

【目的】日常生活では会話をしながら歩くなど二重課題 (Dual task) 条件下の場合が多く,注意を歩行以外に分配させる事が必要であるとされている.脳卒中片麻痺患者において歩行しながらの会話が歩行速度や歩幅を低下させる事が既に報告されている.しかし,我々セラピストが普段治療中に与えている口頭指示が歩行に及ぼす影響についての検討は不十分である.そこで本研究では自由会話や口頭指示が脳卒中片麻痺患者の歩行に与える影響について検討した. 【方法】対象は歩行補助具の有無にかかわらず見守りで30m連続歩行が可能な回復期脳卒中片麻痺患者18名(男性10名,女性8名,左麻痺12名,右麻痺6名,年齢平均66.7±12.2歳,発症後平均138.1±47.0日)とした.対象者にはあらかじめ研究内容を説明し協力の同意を得た.単一課題(Single task,以下ST)は30mの直線路を自由速度で歩行する事とし,Dual taskは1)あらかじめ決められた内容で自由会話をしながら歩行する事(以下DT1)と,2)歩行に関する口頭指示を入力しながら歩行する事(以下DT2)とした.それぞれ言語刺激は対象者の担当セラピストが与えた.歩行速度,重複歩距離を算出し,またSTを基準としたDT1とDT2での歩行速度変化率,重複歩距離変化率を算出した.歩行速度,重複歩距離におけるST,DT1,DT2間の比較は繰り返しのない二元配置分散分析を用い,有意差のあったものに対し多重比較検定を行った.歩行速度変化率と重複歩距離変化率の検定は対応のあるt検定を用いた.いずれも有意水準は5%とした. 【結果】歩行速度はSTで0.41±0.23m/s,DT1で0.34±0.19m/s,DT2で0.38±0.22m/sとなり,ST-DT1間とST-DT2間で有意差を認めた(p<0.01).重複歩距離はSTで0.32±0.08m,DT1で0.29±0.08m,DT2で0.31±0.08mとなり,ST-DT1間とST-DT2間で有意差を認めた(p<0.01).歩行速度変化率はDT1で14.62±19.88%,DT2で6.81±8.03%と有意差を認めなかった.重複歩距離変化率はDT1で9.73±7.49%,DT2で3.31±5.05%と有意差を認めた(p<0.05). 【考察】地域脳卒中患者を対象とした先行研究では,会話による言語出力が要求する呼吸活動や高い認知活動により歩行速度が低下する事が示唆されている.今回の研究では自由会話だけでなく口頭指示によっても歩行速度,重複歩距離が低下する傾向にあった.要因として,歩行中に与えられる口頭指示は対象者に認知活動と身体的な反応を要求する為であると推察される.また、重複歩距離変化率では口頭指示よりも自由会話で減少率が大きい傾向にあり,歩行とは無関係の言語入出力により高い認知活動が要求された為であると推察される.

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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