関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 10
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口述発表2(理学療法基礎系)
歩行における骨盤回旋左右差の検討
*岡田 裕太山本 澄子関 健志
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キーワード: 骨盤回旋, 左右差, 動作分析
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抄録

【目的】 健常成人男性の歩行における骨盤の回旋運動が左右対称におこっているかを確認し、骨盤の回旋運動に左右差があった場合、体幹の回旋運動と股関節の屈伸運動にどのような影響を及ぼすのかを運動学的に検討する。
【方法】 対象は健常成人男性22名とし、計測機器には三次元動作解析システムを使用した。なお、計測にあたり全対象者に対して本研究の趣旨を説明し、本人の承諾を得た上で計測をおこなった。
各対象者には臨床歩行分析研究会が提唱するDIFF形式に対応する部位および左右両側の上前腸骨棘、上後腸骨棘、烏口突起に反射マーカーを貼付し、歩行率114/歩での歩行を計測した。
歩行における骨盤は、必ずしも計測空間内で決められた方向に移動せず蛇行しながら進行方向へ移動する。そこで今回、骨盤の回旋運動の基準線を進行方向に対する垂直線とし、進行方向に対して時計まわりを骨盤右回旋、反時計まわりを骨盤左回旋とした。なお、進行方向の決定は、水平面上における身体重心の軌跡より左踵接地期と次の左踵接地期の重心位置を算出し、結んだ直線方向とした。
【結果】 歩行における骨盤の回旋角度は14.4±4.0°であった。同一対象者の骨盤の左右回旋角度を比較すると、対象者22名中14名の半数以上において骨盤の左右回旋角度に有意差が認められた(p<0.01)。
骨盤と体幹の左右回旋角度において相関分析を行った結果、骨盤と体幹の回旋運動の方向には強い関係が認められた(γ=0.74)が、回旋角度の大きさには関係が認められなかった(骨盤左回旋と体幹右回旋:γ=0.15,骨盤右回旋と体幹左回旋:γ=0.35)。
また、骨盤の左右回旋角度と左右股関節の屈伸角度において相関分析を行った結果、骨盤の回旋角度の大きさに関わらず股関節の屈伸角度はほぼ一定の値を示し、股関節屈曲角度は31.5±3.4°、股関節伸展角度は10.0±3.5°であった。
【考察】 Elftman(1939)は、「歩行における骨盤と体幹の回旋運動は、常に逆方向に回旋することによりバランスを保っている」と報告している。本研究においてもElftmanの報告を支持する結果となったが、骨盤と体幹の左右回旋角度の大きさを考慮すると、骨盤と体幹の回旋運動だけではバランスを保つことができず、効率のよい歩行には他のパラメータの関与が必要であることが示唆された。また、骨盤の回旋角度の大きさに関わらず股関節の屈伸角度は一定の値を呈しすることがわかった。
【まとめ】 本研究結果より、骨盤の回旋運動は効率のよい歩行に重要であると言われているが、骨盤の回旋運動には個人差があり、その影響は骨盤に連結する体幹の回旋運動や股関節の屈伸運動だけにとどまらず、他のパラメータにも影響を及ぼしている可能性が示唆された。

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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