関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: P1-8-072
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ポスター発表8 「基礎2」
坐位での腕組肢位が体幹回旋運動に与える影響についての一考察
*磯谷 隆介杉山 貴規工藤 賢治吉田 一也関屋 昇
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抄録
【目的】
理学療法の臨床において様々な疾患の姿勢や動作を評価する際、体幹機能評価は重要な評価の一つである。体幹評価の際に腕組をしばしば用いるが、腕組肢位により体幹回旋角度が変化することを経験する。そこで、本研究は被験者間・被験者内で腕組肢位による体幹回旋角度を比較・検討することを目的とした。
【方法】
対象は運動器疾患や神経系障害のない成人男性4名(26.0±3.4歳)であり、全被験者とも利き手は右であった。対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき、研究の趣旨を口頭および文章で説明し書面にて同意を得た。測定には、三次元動作解析装置VICON MXシステム(Oxford Metrics社)を用いた。反射マーカーを頚切痕、T2、左右両側に肩峰中央・鎖骨頭・肩甲棘基部・ASIS・PSISに貼付した。体幹回旋角度は、頚切痕とT2を結んだ線と両側ASISを結んだ線の実験室座標における水平面上のなす角とした。腕組の種類は3種類とし、正中位での合掌(N肢位)、右前腕を前にした腕組肢位 (R肢位)、および左前腕を前にした腕組肢位 (L肢位)とした。腕組(R肢位、L肢位)では肘窩に手を置くことを指示した。運動課題は、股関節・膝関節90°屈曲の坐位姿勢で、能動的体幹回旋運動を左右交互に10往復、可動域の限度まで行うこととした。体幹回旋角度は、静止坐位姿勢を基準とし、腕組肢位による体幹回旋運動の角度を求めた。統計解析は分散分析法と多重比較法を用い、有意水準を5%とした。
【結果】
被験者間では、腕組と体幹回旋角度の間には一定の傾向が認められず、個人差が大きかった(p>0.05)。被験者内では、被験者AとBでは腕組肢位と左右体幹回旋角度の間に交互作用が認められ、R肢位、L肢位ともに、腕組を行うことによりN肢位と比較して右回旋角度は減少、左回旋角度は増大する傾向が認められた(p<0.01)。被験者Cでは、R肢位、L肢位ともに、腕組により左右の体幹回旋角度の増大が見られた(p<0.01)。被験者Dでは、R肢位の腕組において左右の体幹回旋角度が減少する傾向が認められた(p<0.01)。
【考察】
被験者間では腕組による体幹回旋角度の変化は一定の傾向が認められなかった。しかし、被験者内での検討の結果、同一被験者内では明確な一定の関係が認められ、その関係が被験者ごとに異なっていた。この結果は、体幹運動の分析において、全ての被験者に共通する一般的特徴を明らかにするだけでなく、個人差を明らかにすることの重要性を示している。今後は被験者数を増やし、肩甲帯の上肢帯肢位の変化が体幹に与える影響を検討する必要があると考える。
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© 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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