関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: P1-8-073
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ポスター発表8 「基礎2」
上腕肢位が体幹回旋可動域に与える影響
*保坂 亮仲保 徹角本 貴彦
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キーワード: 体幹回旋, 上腕, 三角巾固定
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抄録
【はじめに】
 上肢疾患では部位や手術の有無に関わらず,患側上肢三角巾固定が治療手段の一環として選択されることがある.しかし一方で,三角巾固定保持された対象者の体幹可動域において,患側への回旋可動域制限を呈していることを臨床上経験する.今回,上腕肢位が体幹回旋可動域に与える影響について検討したので報告する.
【方法】
 対象は本研究の趣旨に同意した上肢,体幹に既往歴のない健常成人男性17名(23.1歳±3.82)とした.計測肢位は端座位とし,座面高は下腿の高さとした.計測課題は,上肢,肩甲骨,骨盤運動を含まない体幹左右回旋運動で,上腕肢位の違いとして,両肩関節内旋45°位(以下,内旋位),外旋60°位(以下,外旋位),上腕下垂位の3肢位を設定し,無作為に各々3回行った.計測機器には三次元動作解析装置VICON MX(VICON PEAK社)を使用し,各標点位置を計測した.赤外線反射標点を,頚切痕,第1胸椎棘突起,両ASISに貼付した.得られた標点位置から頚切痕,第1胸椎棘突起を結んだ線分を体幹矢状軸として近似し,両ASISを結んだ線分の水平回旋可動域(以下,回旋量)に相対的な体幹矢状軸の回旋量を算出した.3肢位各々で得られた算出データから,左右回旋量の大きい側を優位側として,優位側回旋量,また左右合計回旋量を求めた.また中央値を代表値としてデータの抽出を行った.それぞれの回旋量における統計学的検討には一元配置分散分析(P<0.05)を用いて比較検討を行った.
【結果】
 左右優位側回旋量では内旋位32.4±4.7°,外旋位31.7±6.2°,上腕下垂位30.6±5.6°,左右合計回旋量では内旋位63.3±9.3°,外旋位62.4±11.3°,上腕下垂位60.5±11.2であった.各肢位での有意差は認められなかった.
【考察】
 今回対象とした健常成人での有意差はみられなかった.しかし,左右優位側,左右合計回旋量ともに内旋位が最も回旋量が大きい傾向を示し,臨床において上肢疾患患者が体幹回旋可動域制限を呈している印象とは異なる結果となった.この結果から,肩関節内旋筋による能動的な肩関節内旋位保持と三角巾固定による他動的な肩関節内旋位保持では,異なった体幹回旋動作を行う可能性があると考えられる.また勝木らは,肩甲骨移動量が体幹回旋可動域に影響を与えることを示している.今回,計測課題において肩甲骨運動を含まない上腕肢位の違いにおける体幹回旋運動を行ったため,肩甲骨運動を含む場合には,体幹回旋可動域に影響を与える可能性も考えられる.
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© 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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