関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: PF2-9-064
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フレッシュマン9 「内部障害」
食道がん術後離床時におけるセーフティウォーカー使用の有用性の検討
*山増 正樹中山 治彦円谷 彰尾形 高士渡辺 隆文
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抄録
【目的】
胸部食道がんの標準的な手術方法として右開胸開腹胸部食道亜全摘3領域郭清がある。術後早期離床は肺合併症予防に必要であり、早期の歩行開始が望まれるが、本術式は侵襲が大きく、中心静脈ライン、胸腔ドレーン、硬膜外麻酔チューブ、尿管カテーテル、経腸栄養チューブ、心電図モニターなどを使用したまま立位・歩行練習を実施することになる。またリスクとして起立性低血圧、深部静脈血栓、肺梗塞、膝折れ、転倒等が予測されるため、比較的多くのマンパワーを要する。
一方、当院では理学療法士が1人しか在籍しないため、術後全症例の歩行練習に立ち会うことは困難である。そこで食道外科チームの交代を機に、理学療法士側より理学療法士不在でも立位、歩行時の膝折れや転倒を予防し、なおかつ歩行中に適宜休憩できるよう、歩行訓練開始時に通常歩行器からOG技研社のセーフティウォーカー(以下SW)使用を医師および看護師へ提案した。そこで今回SWの有用性を検討したいと思う。

【方法】
旧食道チーム管理下での患者(28例)をA群、食道新チーム立ち上げ後、SWを使用して歩行した患者(19例)をB群とし、人工呼吸器離脱日、初回立位・歩行の開始日、歩行時の安全面・距離・必要なマンパワーを比較する。

【結果】
A群では、立位、足踏みの開始日の中央値が術後2日目、人工呼吸器離脱日の中央値が術後4日目であり、術後早期の歩行は殆ど行われておらず、また立位、足踏みだけでも最低2人以上の看護スタッフを必要としていた。 一方B群では、人工呼吸器離脱および歩行開始日は全例術後1日目となり、術後1日目の昼・夕方から計2回の歩行練習を実施、その歩行距離は中央値で112m(6-212m)であった。手術翌日でも歩行途中の膝折れや転倒例は無く、歩行時に必要なスタッフ数は歩行開始時3人必要なこともあったが、殆どは医師1人および看護師1人、もしくは看護師2人で十分であった。また2回目以降の歩行練習時には、歩行中は点滴棒の介助をするスタッフ1人の付き添いで十分であった。

【考察】
食道新チームでは、人工呼吸器離脱日が短縮され、それに応じて早期歩行開始が可能となった。また歩行時の膝折れ・転倒などのトラブルはなく、マンパワーに関して初回歩行はリスク管理のため比較的多くのスタッフが関わらざるをえなかったが、2回目以降の歩行ではスタッフおよび患者のトラブルに対する恐怖心が減り、1人介助が可能となったと考えられる。

【まとめ】
食がん術後の歩行訓練に関し、SW使用は患者の安全面、また医療スタッフのマンパワーの面でも有用であり、食道癌手術翌日の早期離床でも安全に行うことに寄与すると思われる。
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© 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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