関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O2-12-072
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口述発表12 「運動器4」
大腿骨近位部骨折患者の受傷状況,受傷前生活に関する調査
*小川 幸恵中山 裕子保地 真紀子細野 敦子
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抄録
【はじめに】
大腿骨近位部骨折後症例の受傷に至った状況を把握することは,再骨折の予防だけでなく,安全な入院生活を送るという点からも重要と考えられる.今回,受傷状況と受傷前生活からどのような特徴があるか調査を行った.
【対象と方法】
対象はH21年10月~H23年3月に回復期病棟に入棟した大腿骨近位部骨折患者のうち調査が可能であった118名(男性17名,女性101名,平均年齢83.4±8.7歳)とし,カルテより受傷時間帯(午前2時より4時間毎6群に分けた)を調査し,さらに各時間帯での受傷場所(屋内,屋外),受傷前ADL(自立,介助),認知症の有無を集計した.また,内服状況も調査を行った.時間帯による頻度の違いはχ2検定を用い検討した.
【結果】
受傷時間は,2-6時14名(11.8%),6-10時29名(24.5%),10-14時19名(16.1%),14-18時24名(20.3%),18-22時18名(15.2%),22-2時14名(11.8%)であり,時間帯で偏りが認められた.夜間~早朝にかけての受傷は,約半数がトイレ周辺等の排泄に伴う転倒で,7時以降は廊下・食堂等,居室外での転倒が見られ,時間により受傷場所にも違いが見られた.ADL自立の症例は日中の受傷が多く,夜間~早朝の受傷は少ない一方で,ADL介助の症例はその時間帯での受傷が多く,約8割の患者が認知症を合併していた.認知症のある症例は,比較的受傷時間帯の偏りは少なかったものの,ピークは6-10時であり,認知症のない症例のピークは14-18時で,夜間~早朝は少ない結果であった.男性では,時間帯に関わらず排泄に伴う転倒はほとんど見られなかった.眠剤の内服は16名(13.6%)であり,そのうち4名に夜間の転倒が見られた.
【考察】
今回の調査では,早朝~午前の受傷が多いことが分かった.その中で6時台まではトイレまたは居室内での受傷が多く,7時以降は居室外での転倒が見られ始め,早朝の排泄,および起床後の食事などに伴う受傷が多かったのではないかと考えられた.ADL介助の症例に,夜間・早朝の受傷が多いのは,認知症を有する割合が高く,介助者のいない一人での行動によるものが考えられた.また認知症の有無により,受傷時間帯のピークが異なる傾向がみられ,ADL自立か否かも関与していることが考えられた.排泄に伴う受傷が男性で少ないのは,何らかの性差が関係する可能性があるが詳細は不明であった.今回の結果より,受傷状況は時間帯に偏りがあり,受傷前ADL,認知症の有無が関係しているのではないかと考えられた.
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© 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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