東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P014
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歩行補助具選択におけるバランス評価の検討
*北野 真弓佐々木 伸一嶋田 誠一郎北出 一平松村 真裕美亀井 健太久保田 雅史野々山 忠芳小林 茂竹野 健一馬場 久敏
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抄録
【目的】 患者に適切な歩行補助具を提供することは理学療法を実施する上で非常に重要であるが、歩行補助具選択について、明らかなバランス評価基準はない。よって、本研究の目的は、バランス評価において、どの評価が杖歩行の可否と関係があるかを明らかにすることとした。 【対象】
対象は当院に入院している男性2名、女性10名の計12名(整形疾患6名、中枢疾患6名)とし、年齢77.7±13.1歳、身長149.7±13.2cm、体重46.4±11.2kgであった。全ての対象者は病棟内移動手段が車椅子であり、理学療法室ではキャスター付き4脚歩行器または杖を使用していた。杖歩行を介助なしで10m以上可能である患者は杖歩行群(6名)とし、杖歩行が実施不可能な患者は歩行器歩行群(6名)とした。対象者には本研究の趣旨を十分説明し,同意を得て行った。
【方法】
片脚立位保持時間(片脚立位)、360°方向転換の時間(方向転換)、最大前方移動距離(リーチ)、歩行速度の各項目を、歩行補助具である平行棒、キャスター付き4脚歩行器、T字杖を使用し、測定した。片脚立位と方向転換は左右計測し、その合計を算出した。片脚立位は30秒間以上保持可能であれば十分と判断し、最高値は左右合計の60秒とした。リーチは一方の上肢にて各補助具を把持し、他方の上肢で前方へリーチを実施し、測定した。歩行速度は、平行棒においては平行棒内の距離1.92mでの歩行速度を、歩行器と杖においては10m歩行の歩行速度を測定した。各項目とも3回計測し、その平均値を用いた。どの項目においても最大努力をするよう指示し、各試行間には十分休憩をとった。統計は対応のないt-testを用い、有意水準は5%とした。
【結果】
歩行器における方向転換は、杖歩行群が歩行器歩行群と比べ有意に時間が短縮した。さらに、歩行器における歩行速度では、杖歩行群が歩行器歩行群と比べ有意に速度が低下した。その他の項目では有意差は見られなかった。
【考察】
本研究の結果より、杖歩行可能な患者(杖歩行群)と杖歩行不可能な患者(歩行器歩行群)の差は、キャスター付き4脚歩行器における方向転換と歩行速度であった。これらは杖歩行の可否といった歩行能力を反映していると考えられ、歩行補助具選択の際にポイントとなる可能性が推察された。一方、平行棒とキャスター付き4脚歩行器での片脚立位やリーチ動作は杖歩行の可否といった歩行機能ではなく、上肢機能がより関与していると考えられる。
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© 2007 東海北陸理学療法学術大会
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