関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 100
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症例報告 慢性期下肢リンパ浮腫に対し複合的理学療法の効果が得られた症例
永瀬 佳子松宮 巧
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抄録

【はじめに】
複合的理学療法とは、国際リンパ学会において標準治療として認められたリンパ浮腫保存療法の一部で、スキンケア・リンパドレナージ・圧迫・圧迫下での運動療法の4つの主要素からなる。今回、発症より5年以上経過した両下肢続発性リンパ浮腫の患者に対し、外来で複合的理学療法を中心とした保存療法を行い、浮腫の改善が得られた症例を報告する。報告に際し、写真掲載を含めた同意を本人及び家族に得た。
【症例】
84歳女性。21年前、子宮癌にて摘出術を施行。5、6年前より両下腿を中心に浮腫が出現したが受診せず重症化。H23年9月、かかりつけの整形外科より当院へ紹介。慢性浮腫により、潰瘍の瘢痕化、変形性膝関節症の悪化、歩行速度や耐久性の低下を呈していた。
【経過・結果】
9/30より基礎知識の説明とセラピストによるケアを開始。浮腫軽減とセルフケアが継続できることを目標に設定。本人が高齢で、セルフケアを自立させるのは困難と判断し、毎回娘に同席を求めた。スキンケアとドレナージの指導は、本人が実施する部分と娘が協力する部分を確認した。自己評価として、煩雑な周径計測の代わりに単純な体重管理を指導。10/7より娘の協力で、バンデージ法による圧迫療法を開始。1か月程で固い圧痕の残る浮腫から柔らかい浮腫に変化した。2か月で周径が安定したため、圧迫方法を医療用弾性ストッキングに変更。12/19セルフケアが確立したと判断し、計10回の介入で終了。開始から終了時の周径変化は、右下肢大腿-5.4cm・下腿-9.5cm、左下肢大腿-4.4cm・下腿-8.3cmであり、体重変化は-7.2kgだった。浮腫軽減に伴い、歩行が楽になったと満足感も得られた。
【考察】
癌の術後や放射線治療後に生じるリンパ浮腫は、完治させることが困難である。発症した浮腫を放置することは、感染リスクの増大、下肢重量によるADL制限や関節への負担増大、見た目の悪化等、様々な悪影響につながる。現在では、術後早期より発症や悪化予防のため、セルフケア指導が行われている。しかし、本症例のように20年以上前に手術を受け、十分な指導を受けていなかったため、浮腫を放置してしまう患者も存在する。今回の結果は、慢性期であっても適切な介入を行うことで浮腫を改善できること、それにより二次的な障害を好転できることを示している。また、単にセラピストの手技で周径を減少させるだけでなく、本人や家族の負担を考慮しつつ、セルフケアへの移行を意識した指導を行うことが重要であったと考えられる。
【まとめ】
慢性の重度リンパ浮腫の軽減に、複合的理学療法が有効であった。適切な介入に加え、早期からのセルフケア指導の重要性が示唆された。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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