関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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筋発揮張力維持法と筋への触圧覚刺激の変化が血中乳酸値に及ぼす影響
堀内 俊樹西田 裕介渡邉 浩文
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抄録

【目的】
理学療法介入の中でも,筋力強化運動は最もよく処方されるプログラムの一つである。本研究では,効率よく筋収縮を促すための運動条件を明らかにすることを目的に,筋発揮張力維持法(以下,LST)と筋への触圧覚刺激を融合させた運動を立案し,その運動方法が血中乳酸値に与える影響について検討した。
【方法】
対象は健常成人男性15名(年齢26.2±3歳、身長170.3±4.49cm、体重64.9±7.52kg(平均±標準偏差))とした。初めに最大随意収縮の測定をBIODEX System3を用いた。測定は3回行い,平均値を算出した。次に,足関節の底屈運動を右側のヒラメ筋を用いLSTで行った。運動方法は最大随意収縮の50%を負荷強度とし,3秒下ろし,3秒上げの動作を1回とし8回繰り返した。運動はランダムに施行し,触圧覚刺激は下腿最大膨隆部にカフを巻き施行した。運動終了後の1条件後に血中乳酸値を測定しました。条件設定は,0,30,40,50,60mmHgの5条件を用いた。測定姿勢は股関節,膝関節屈曲90°,足関節底屈0°とし,代償動作が出ないように配慮した。統計処理には,Tukeyの多重比較検定を用いて検討した。有意水準は危険率5%未満とした。<BR>対象者には口頭にて実験の主旨説明し,同意書にて参加の同意を得た。本研究は,聖隷クリストファー大学の倫理委員会の承認のもと実施した。
【結果】
血中乳酸値は,全ての対象者において60mmHgで高い値を示した。統計学的検討の結果,0mmHgと比較して60mmHgで有意に高い値を示した(n=15,0mmHg=1.87±0.51,60mmHg=2.79±0.82,p<0.05)。
【考察】
60mmHgという触圧覚刺激量は,筋内の低酸素環境を惹起できる刺激量であると考えられ,血中乳酸値を効率よく上昇させうる刺激量として適切な負荷量であることが示唆された。これまで疲労物質として捉えられていた乳酸は,現在ではその代謝特性から筋収縮におけるエネルギー源として定義されていることからも,代謝産物である乳酸の上昇は,筋収縮を効率良く促す条件設定として有効であると考えられる。
【まとめ】
健常成人男性に対して,LSTと60mmHgの触圧覚刺激を融合した運動は,血中乳酸値を効率よく上昇させることを明らかにしたことが挙げられる。さらに,血中乳酸値が上昇することは,筋のエネルギー源が増加することと類似している現象である。この血中乳酸値の上昇に伴う筋のエネルギー源の増加は,筋収縮力を増大させるための骨格筋内の環境を整える条件設定として有効であり,触圧覚刺激量の観点から骨格筋機能の特性を把握できた点は大変意義深い成果であると考える。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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