関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 103
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末梢神経損傷モデルラットに対するバランス運動が神経栄養因子BDNF・TrkBmRNA発現に与える影響
金村 尚彦五十嵐 美穂石井 達也国分 貴徳西川 裕一前島 洋高柳 清美
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抄録

【目的】
末梢神経損傷直後より間欠的伸張運動を施行した結果、脱神経筋に対する神経再支配を促通し、神経伝導性の改善をきたす可能性が示唆されているが,神経修復や生存維持に関与している神経栄養因子脳由来神経栄養因子(brain –derived neurotrophic factor,以下BDNF)とその受容体その受容体(tyrosine kinase receptorB,以下TrkB)について,ヒラメ筋における神経栄養因子の発現について,神経損傷後のバランス運動の影響を比較検討した。
【方法】
坐骨神経凍結圧挫による末梢神経損傷モデルのラットを作成した。ラットは対照群、損傷後運動群、損傷後非運動群,無処置運動群の4群(各6匹)に分けた。神経圧挫術後2日目から運動群には,運動方法は、外乱刺激装置(回転角度±7度、回転速度25rpmのプラットフォーム)を用い、期間は4週間、週に5日、1日1時間実施した。実験終了後、ラットヒラメ筋を摘出し、急速凍結した.ヒラメ筋,をホモジナイザーにて粉砕後、total RNAを抽出した。total RNA からcDNA作成した。その後cDNAを鋳型とし、神経栄養因子BDNF とその受容体 TrkB mRNAプライマーを用い、リアルタイムPCR法にて解析した。.統計解析は,各beta-actin mRNA発現量で正規化したBDNF,TrkBmRNA発現量を算出し,一元配置分散分析,および多重比較検定を実施した.なお本研究は,本学実験動物倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
BDNFmRNA発現量,TrkB mRNA発現量ともに4群において有意な差を認めなかった。
【考察】
ラットの運動機能を観察した結果,神経損傷後運動を行った群が足関節運動機能や,歩容の改善を認めた。末梢神経損傷後の運動介入は神経再生を促進し、早期の機能改善を得るために有効であるが推察された。坐骨神経支配下にあるヒラメ筋を対象にBDNFとその受容体TrkBに着目し,その発現量と運動の関係を探索したが,統計的な差を認めなかった。神経栄養因子の分泌は,自己分泌,傍分泌であり,神経細胞や他の器官で産出されたタンパク質を利用し,神経修復を行なっていると推察されている。本研究は,神経栄養因子を産出している筋に着目し,実験を行ったが,ヒラメ筋で産出されるBDNFやTrkBmRNAの発現量には変化を認めなかった。ラット歩容の改善には,Schwann細胞や未分化Schwann細胞を刺激するサイトカインの分泌の影響、また運動により循環動態の改善がなどにより運動機能が改善された可能性が示唆される。今後の課題として神経修復や運動機能の改善には他の因子の探索や,損傷神経自体から発現する神経栄養因子の発現についても比較する必要がある。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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