関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 105
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座位における頸部および体幹の前額面上姿勢が自覚的視性垂直位に与える影響
河原 陽平堀 翔太(OT)藤本 修平小林 資英(OT)
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抄録

【目的】
視覚によって垂直軸を判断する、自覚的視性垂直位(Subjective Visual Vertical;SVV)がある。SVVは立位姿勢や歩行能力に影響すると言われている(Bruell,1957)。このSVVを評価する場合、姿勢の影響は否めないものの、実験条件として定義されている報告はあまり見られていない。特に頸部および体幹については平衡覚など感覚系の影響からも、単独またはそれらの姿勢の組み合わせによって異なる可能性もある。よって本研究では、座位において前額面上の頚部および体幹の姿勢がSVVに影響するか検討した。
【方法】
対象は健常者20名(平均年齢27.6±3.6歳)とした。対象には、ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の内容を十分に説明し同意を得た。まず、SVVを評価する機器の前で対象に椅座位をとらせた。機器はパーソナルコンピューター(PC)とその周辺視野を遮るための自作器具からなる。PCには、棒が映し出され、その棒が60°傾斜した位置から60°/secで反対側の同位置まで動くように設定した。対象にはPCを操作させ、この棒が垂直位となった時点で主観的に止めるように指示した。規定した姿勢は5種類とし、空間的な各部位の位置関係から、正中位(頸部0°・体幹0°位)、頚部側屈位(頸部20°・体幹0°側屈位)、身体傾斜位(頸部20°・体幹20°側屈位)、立ち直り位(頸部0°・体幹20°側屈位)、最大傾斜位(頸部40°・体幹20°側屈位)とし、各々左右で各2回ずつ測定した。これらの姿勢は自作の機具で規定し、実験中に動かないようにベルトにて固定した。また外部環境の影響を少なくするために、実験は静かな暗室で実施した。解析は、対象が判断した時点の棒の傾きをグラフィックソフトCanvas8で計算し、得られたデータと真の垂直位の差(SVV度)を算出し、その絶対値平均を採用した。統計解析は各姿勢間のSVV度を比較するために、Shaffer法でαエラーを補正した後に対応のあるt検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
最大傾斜位とその他の姿勢全ての間、および正中位と頚部側屈位、身体傾斜位の間で有意差が見られた。
【考察】
健常者では座位姿勢によってSVVが異なることが示唆された。本研究の結果ではいずれも、頸部が空間的に傾斜した構えにおいて大きな差を認めており、固有感覚よりも視覚や平衡覚の影響が強いことが考えられる。
【まとめ】
健常者において座位姿勢の違いによってSVVが異なることがわかった。その中でも特に頚部の空間的な位置が影響しており、今後の研究において実験条件を規定する必要性があると考える。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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