関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 111
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移乗動作に対して応用行動分析学的アプローチによる効果の検討 ~環境設定の定着に着目して~
西田 翔村上 貴史
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抄録

【目的】
 今回、病棟での移乗動作が自立しない症例に応用行動分析学的介入を行った。その効果について検討した。
【方法】
 症例は70歳代男性、脳梗塞、右片麻痺であった。運動機能はBr.stageⅣ-Ⅳ-Ⅴ、高次脳機能にて注意障害を呈していた。その症例に4週間の応用行動分析学的介入を行った。介入では(1)目標設定の明確化(2)先行刺激の整備(3)後続刺激の整備を行った。目標は1)「車椅子位置の適切な設置」2)ブレーキ管理」3)「フットプレート管理」とした。先行刺激はプロンプト・フェイディング法を行った。プロンプトは1週目に口頭指示およびモデリング、2~3週目に視覚的プロンプト、4週目にプロンプトの消去を行った。後続刺激はチェックリストを用いて、上記目標の成否を症例にフィードバックした。チェックリストにおいて1)は規定位置に設置した場合に○、2)と3)は適切に行った場合に○とした。チェックリストにて介入前、介入後1週間、2週間、3週間および4週間の1週間毎の成功率を比較した。成功率は移乗動作回数に対する適切な動作数の割合とし、1週間の平均値を代表値とした。チェックリストの記載は理学療法士、作業療法士、看護師および介護士とし、時間帯は日中、期間は4週間とした。尚、本報告について対象者に十分に説明し同意を得た。
【結果】
 介入前は成功率が1)48.8%、2)56.4%、3)69.4%であった。2週目より視覚的プロンプトを導入した結果、1)の成功率が急上昇し、2週目90%以上・3週目95%以上となった。2)と3)は徐々に成功率が上がり3週目に100%となった。1)において4週目に刺激入力の消去を行っても成功率90%以上を維持した。
【考察】
 本症例の介入にあたり適切な動作が定着しなかった背景に対してABC分析を行った。適切な動作が定着しなかった原因として、適切な手順とその必要性の理解力低下、環境に対する認識低下、そして後続刺激に対する不適切な入力が特に考えられた。介入にあたり、山崎ら(2008)は視覚的プロンプトが適切に動作獲得に影響すると報告している。本症例に視覚的プロンプトを用いて成功率が上昇し、視覚的プロンプトの有効性が考えられた。また、鈴木ら(2004)は強化刺激が適切な動作の出現頻度に影響すると報告している。適切な動作に対して賞賛や成功体験などの強化刺激は、本症例の適切な動作学習の促進に影響したと考えられた。以上より今回の応用行動分析学的介入の有効性が考えられた。
【まとめ】
今回、脳梗塞患者の適切な移乗動作獲得のため、応用行動分析学的介入を行った。本症例において特に視覚的プロンプト、強化刺激が適切な動作獲得、環境設定に影響したと考えられた。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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