関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 117
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脳卒中片麻痺患者の階段昇降能力と身体機能・歩行能力の関連
-手すりを使用しない昇降に着目して-
下池 まゆみ武川 真弓
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キーワード: 片麻痺, 階段昇降, 身体機能
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抄録

【目的】
脳卒中片麻痺患者の階段昇降時における手すりの可否は、活動範囲に影響を与える一因と考える。片麻痺患者の階段昇降に関する先行研究では、一足一段での自立獲得や装具を非着用で行うなど、特定の条件下で実施している。本研究の目的は、昇降方法を特定せず、手すりなしで階段昇降を行うために必要な身体機能・歩行能力を明確にすることである。
【方法】
対象は当センターの入院患者で研究参加に同意が得られた片麻痺患者20名(右8例、左12例)、平均年齢は57.3±15.7歳である。失調症、くも膜下出血、多発性脳梗塞は除き、倫理委員会で承認を得た上で実施した。階段昇降能力は、20cm×3段を監視以上で、杖の使用もしくは手すりなしで可能な者を手すりなし群(10例)、手すりの使用で可能な者を手すりあり群(10例)とした。二足一段や一足一段の方法は限定せず、装具の着用を認めた。身体機能・歩行能力は、a)年齢、b)Body Mass Index、c)発症からの期間、d)麻痺側・e)非麻痺側下肢筋力、10mのf)歩行時間・g)歩数、h)12段階式片麻痺機能テスト、i)大内転筋・j)下腿三頭筋のModified Ashworth Scale、k)深部感覚障害(股関節)の有無、l)麻痺側・m)非麻痺側の下肢荷重率(以下WBR)、の13項目とした。下肢筋力は端座位で一側の足底下に体重計を置き、下肢で最大努力下で押し、WBRは装具の着用を認めた立位で一側の体重計に最大限体重を偏倚し、各々の荷重量を体重で除した値とした。分析はa、c、d、e、f、g、lはt検定、b、h、i、j、mはMann-Whitney検定、kはχ2検定を用い、2群間で13項目を比較した。次に有意差を認めた項目に二項ロジスティック回帰分析を行った。統計はSPSSIIを用いた(p<0.05)。
【結果】
手すりなし群は麻痺側WBRが高値、10m歩行時間が短い、歩数が少ない、非麻痺側下肢筋力が低値となった。二項ロジスティック回帰分析では10m歩行時間のみが有意な因子であった。
【考察】
杖の使用や手すりなしの昇降には麻痺側下肢の支持性やバランスなど複数の能力が必要となるため、非麻痺側筋力より麻痺側WBRに関係があると考える。先行研究では、麻痺側下肢機能と移動能力との強い相関や、非麻痺側筋力よりも麻痺側WBRが階段昇降自立に関係すると報告しており、本研究も支持する結果となった。手すりなし群は歩行時間が速いことから、速い歩行では床反力の垂直分力が大きくなるため上下動作である階段昇降と関連があり、特に杖の使用や手すりなしの昇降に関係していると考えた。
【まとめ】
杖の使用もしくは手すりなしの階段昇降には麻痺側WBR、10m歩行時間・歩数と関係があり、特に10m歩行時間との関連が示唆された。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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