関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 118
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脳血管疾患片麻痺者の理学療法開始時の身体機能と発症4週目の歩行自立の可否との関連
熊切 博美大森 圭貢寺尾 詩子佐々木 祥太郎笹 益雄
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抄録

【目的】
脳血管疾患患者の急性期病院の在院日数は発症約4週と短縮している。脳血管疾患では歩行障害を有する者が多く、脳血管疾患患者の歩行自立の可否に関連する報告は数多くされている。しかし、発症約4週時の歩行自立の可否に関連する報告は少ない。本研究の目的は、発症後22-28日の歩行自立の可否に関連する理学療法開始時の身体機能を検討し、発症約4週目の歩行自立の可否に影響する因子を明確にすることである。
【方法】
対象は平成20年5月から平成23年11月に脳梗塞あるいは脳出血を発症し、入院後に理学療法を行った者である。取り込み基準は、発症前の歩行が自立の者、理学療法開始時の歩行が非自立の者、発症後10日以内に評価を行えた者である。評価は、年齢、麻痺側、Brunnstrom motor recovery stage(BRS)、感覚障害の有無、失語症の有無、両側の膝伸展筋力と片脚立位時間、Mini-Mental State Examination (MMSE)、歩行自立の可否とした。身体機能は理学療法開始時、歩行自立の可否は発症後22-28日に評価した内容を、診療録から後方視的に調査した。歩行自立の可否は自立、非自立の2群に分類した。分析は、開始時の身体機能を歩行自立の可否により分類した2群間で、Mann-WhitneyのU検定とカイ2乗検定を用いて比較した。次に有意な変数を独立変数、従属変数を歩行自立群1、非自立群0としたロジスティック回帰分析を行った。統計的有意水準は危険率5%未満とした。本研究は、対象者に研究の趣旨、内容および調査結果の取り扱いについて十分な説明を行い、同意を得て実施した。
【結果】
分析は全ての条件を満たす29名(自立群11名、非自立群18名、BRS4は3名、5は4名、6は22名)を対象に行った。単変量解析の結果、歩行自立群と非自立群間では年齢、麻痺側と非麻痺側の膝伸展筋力、MMSEで有意差があった。ロジスティック回帰分析では、麻痺側膝伸展筋力とMMSEが有意な変数であり、オッズ比(95%信頼区間)は麻痺側膝伸展筋力は1.09(1.02-1.16)、MMSEは181.63(1.29-25466.52)であった。
【考察】
ロジスティック回帰分析の結果、麻痺側膝伸展筋力、MMSEが有意な変数であったことから、理学療法開始時の麻痺側下肢筋力や認知機能障害の有無は、年齢や非麻痺側下肢筋力に比べ、発症4週目の歩行自立の可否に関連する因子と考えられた。
【まとめ】
脳血管疾患による軽度片麻痺者の理学療法開始時の麻痺側膝伸展筋力、MMSEは、発症約4週目の歩行自立の可否に影響する因子である。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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