関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 120
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パーキンソン病患者の円背姿勢に影響を与える要因
海老澤 玲薄木 健吾米澤 隆介渡辺 学絽カ 慶太梁 正淵
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抄録

【目的】
パーキンソン病(PD)は種々の運動症状に加え,体幹が前屈前傾した円背姿勢などの姿勢アライメント異常を併発し,これが日常生活動作障害を助長しているとの報告は多い.理学療法ではこうした姿勢アライメント異常を改善し得る方略を模索すべきであると考えられるが,姿勢アライメント異常の原因については研究報告が少なく一定の見解を得ていない.そこで,本研究はPD患者の円背姿勢に影響を与える要因について調べることを目的とした.
【方法】
当院に入院中または外来通院中のPD患者9例(75.0±5.6歳,Yahrステージ I:1例,II:3例,III:3例,IV:2例)を対象とした.除外基準は背もたれのない椅子での座位保持が困難な例,認知機能低下のため計測が困難な例,脊椎圧迫骨折の診断がある例,脊椎の手術歴がある例とした.本研究は当院倫理委員会から承認を得ており,対象者には口頭および書面で説明を行い,同意を得た後に計測を実施した.なお,計測は服薬による影響を考慮してOn時に実施した.調査項目は年齢,罹病期間およびUnified Parkinson Disease Rating Scaleの運動症状項目であるPart III(UPDRS III)を評価した.円背姿勢の計測は対象者を背もたれのない椅子に足底を接地した状態で座らせ,自在曲線定規(三幸製図機械製作株式会社)を用いて第1頸椎から第4腰椎高位までの背部をなぞり,Milneらの式を用いて円背指数を算出した.計測は安楽座位と上肢を使わずに体幹をできるだけ伸展させた努力座位の2条件で実施した.統計学的解析は座位条件間での円背指数の差にはMann-WhitneyのU検定を用いた.円背指数と年齢,罹病期間,YahrステージおよびUPDRS IIIとの相関にはSpearmanの順位和相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.
【結果】
安楽座位と比べて努力座位の円背指数は有意に低値を示した(p=0.03).また,安楽座位の円背指数はYahrステージ(p=0.02,r=0.76)およびUPDRS III(p=0.01,r=0.80)と有意な相関を認め,努力座位の円背指数はUPDRS IIIと有意な相関を認めた(p=0.01,r=0.84).一方,どちらの条件における円背指数も年齢および罹病期間とは有意な相関を認めなかった.
【考察】
円背指数は安楽と努力座位の両条件間で有意な差を認め,かつどちらの条件でも円背指数とUPDRS IIIの間に有意な相関を認めたことから,PD患者の円背姿勢については年齢や罹病期間よりも運動症状との因果関係が示唆された.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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