関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 121
会議情報

大腿骨顆上骨折に対し、代償のない歩行獲得のためにアプローチを工夫した症例~ボディイメージに着目して~
唐沢 彰太
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
骨折に対する早期リハビリテーションでは疼痛を伴う事が多く、運動の基となるボディイメージが疼痛を伴った状態で修正されてしまう。その結果、心因性の疼痛、防御性収縮による運動障害、筋出力・協調性の低下などを引き起こす。以上を踏まえ、今回ボディイメージに着目しアプローチを行い、筋出力・協調性向上と著明な代償のない歩行を獲得した大腿骨顆上骨折の症例について簡単な考察を交え報告する。また、今回の発表に際し、ご本人に説明と同意を得た。
【症例紹介】
87歳女性、T字杖にて歩行中段差に躓き転倒受傷。AOグループ分類でB1の右大腿骨顆上骨折と診断され3日後外側アプローチによるプレート固定術施行。術後3週間完全免荷とされ、術後18日目にリハビリ目的にて当院へ転院となった。
【初期評価】
患部炎症兆候みられ、右膝関節他動屈曲95°にて10段階pain scaleにて9の疼痛を訴え、膝関節単独での運動困難であり代償が著明に見られていた。筋力はMMTにて右股関節屈曲・外転2レベル、右膝関節については疼痛にて制限され2レベルだった。また、荷重開始時では荷重時痛(段階8)が出現した。
【経過】
術後3週より1/3、1/2、2/3と1週毎に荷重量増加し7週目にFWBとなった。完全免荷時期には、疼痛の出現しない範囲で動かし、主に感覚からのアプローチを行なった。荷重開始より、荷重量に伴い正中線意識下での姿勢保持練習と歩行練習中心に行なった。経過に伴い炎症減少し、全荷重ではフリーハンドでの歩行練習行い、屋内フリーハンド、屋外T字杖使用にて入院より90日目に在宅退院となった。
【最終評価】
退院時には右膝関節140°屈曲時に疼痛(段階2)出現するも、荷重時痛は出現しなかった。筋力は、右下肢4~4+に向上し、個々の関節でのスムーズな運動も可能となった。歩行については、患側の立脚期がやや短いが体幹の代償は出現せず、小走りまで可能となった。
【考察・まとめ】
初期評価時では、患側下肢にMMT2レベルと疼痛による筋出力の低下、代償運動が出現してしまうなどの協調性障害がみられていた。これらは抑制現象によるボディイメージの崩れの影響と考えられる。以上に対し、抵抗運動による筋力トレーニングや荷重練習などの疼痛を伴いやすい訓練を行なわず、ボディイメージを正常な運動感覚情報より作成する目的で介入した。その結果、疼痛によるボディイメージの崩れが修正され最終評価時では、筋出力・協調性の向上が見られ、代償のない動作獲得に繋がったと考えた。しかし、最終可動域での疼痛の出現や立脚期の不均等など、転倒のリスクとなりうる因子が残存した為、今後の課題であると思われた。

著者関連情報
© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top