関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 122
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大腿骨転子部骨折術後、スポーツ復帰を成し得た一例
朱島 綾子長 正則吉川 咲子
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抄録

【はじめに】
大腿骨転子部骨折後のスポーツ復帰に関する報告は少ない。今回受傷後スポーツ復帰に向けた理学療法(PT)を行い良好な成績が得られた一例を経験した。文献的考察を加え報告する。本症例には本研究の趣旨を充分に説明し同意を得た。
【症例】
50歳代、女性。趣味:マラソン。診断名:左大腿骨転子部骨折
Hope:痛みなく走る。Need:走行能力確保。長期目標:10km・ハーフマラソン完走。
【結果(経過)】
自転車と衝突し転倒し受傷。同日当院受診し入院。受傷3日目、手術(ツインフック)施行。術後1週、1/2荷重開始。術後18日目、退院。週2~3回、外来でPTを継続。術後3週、全荷重開始。閉鎖的運動連鎖訓練(CKCex)はスクワットを中心に行い開放的運動連鎖訓練(OKCex)はセラバンドを使用。術後6ヶ月、走行開始。持久力exは水泳・ジョギングを実施。術後8ヶ月、足底板療法実施。術後9ヶ月、10kmマラソンを(1:05:08)完走。受傷前の記録(52:15)と同等の速さで走行できPT一旦終了。術後11ヶ月、抜釘。術後33ヶ月、疼痛としびれが出現しPT再開。術後34ヶ月、ハーフマラソンを2:06:58(受傷前:2:00:28)で完走。
【評価】
術後6ヶ月:可動域(ROM)(右/左)股関節屈曲145°/135°、伸展15°/5°。走行中左股関節伸展(-)。徒手筋力検査(MMT)(右/左)大腿四頭筋・大殿筋・腸腰筋・腹筋群5/4中殿筋5/4。スクワット左Knee in(+)。左支持期内転筋疼痛(+)。左トレンデレンブルグ徴候(+)。
術後9ヶ月:ROM・MMT左右差なし。走行中左股関節伸展可能。スクワット左Knee in(-)疼痛(-)。左トレンデレンブルグ徴候減少。
術後33ヶ月:MMT前脛骨筋5/4。前足部疼痛・しびれ(+)。
【考察】
入院中のPTは日常生活動作(ADL)自立を目標とし、外来のPTでは長期目標に向けて走行動作と持久力獲得に主眼を置いた。福井らは「走行は母指球でのバランス能力、ストライドを大きくするための股関節の可動性、上半身の安定性、下肢パワーの要素が必要」とある。高柳らは「走行は立脚相の下肢はCKCの運動を、遊脚相はOKCの運動を行っており、CKC・OKCを組み合わせた訓練が必要である」と報告している。今回、大腿骨転子部骨折術後に10kmマラソン・ハーフマラソンへの復帰が可能であった。これは股関節可動性おより上半身安定性の獲得、CKC・OKCを組み合わせた訓練により下肢パワーの獲得、水泳・ジョギングにより持久力を獲得できたことが要因であると考えた。
【まとめ】
大腿骨転子部骨折後マラソン復帰に向けてPTを行った。術前と同等の速度で10km・ハーフマラソンを完走という良好な成績が得られた。今後、長期成績を含めた更なる検討が必要であると考えた。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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