関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 126
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人工膝関節全置換術患者における術側膝関節伸展筋力と主観的動作評価との関連
桂田 功一平野 和宏五十嵐 祐介田中 真希石川 明菜姉崎 由佳樋口 謙次中山 恭秀安保 雅博
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抄録

【目的】
本研究の目的は、人工膝関節全置換術(以下TKA)患者の術側膝関節伸展筋力(以下膝伸展筋力)と主観的動作評価(以下動作評価)を調査し、その関連を明らかにすることである。
【方法】
対象は初回片側TKA施行例とした。測定項目は膝伸展筋力、動作評価の2項目であり、測定時期は術前・術後3・8・12週とした。各時期に測定可能であった症例数は、術前で73例、3週で95例、8週で69例、12週で53例であった。膝伸展筋力は、Hand-Held Dynamomater(ANIMA社製、μ-tas)を使用し膝関節60°屈曲位にて2回測定し、最大値を体重(kg)で除し正規化した。動作評価は5段階スケール(楽にできる:5点~できない:1点)による自己記入式の質問紙法で調査し、立ち仕事・階段昇段・階段降段・荷物を持つ・歩行・床の物を拾う、の6項目の点数および6項目の合計点を算出した。統計解析は、各測定時期における筋力値と各動作評価の点数および6項目の合計点をSpearmanの順位相関係数を用い、危険率を1%として検定した。なお、本研究は本学の倫理審査委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に則り行った。
【結果】
相関関係を認めた項目を順に示す。術前では立ち仕事(r=0.41)、階段昇段(r=0.43)、階段降段(r=0.43)、荷物を持つ(r=0.56)、歩行(r=0.50)、6項目の合計点(r=0.54)、術後3週では歩行(r=0.41)と6項目の合計点(r=0.40)、術後8週では立ち仕事(r=0.43)、階段昇段(r=0.43)、階段降段(r=0.43)、荷物を持つ(r=0.47)、歩行(r=0.51)、床の物を拾う(r=0.41)、6項目の合計点(r=0.52)となり、術後12週では相関関係を認めなかった。
【考察】
術前は、膝伸展筋力の高い患者が主観的動作評価も高くなるという結果であった。術後3週では、疼痛による筋力や動作能力のばらつきの影響や、対象の大部分が入院中あるいは退院直後であり、立ち仕事や荷物を持つ等の動作を行っていない場合が多いことから、歩行および6項目合計点にしか相関が認められなかったと考える。術後8週になると、院内ではなく自宅内での生活になり、立位での動作機会が増えるために全ての項目で相関が認められたと考える。しかし、術後12週では膝伸展筋力と動作評価に相関を認めなかった。屋内から屋外へと徐々に活動範囲が拡大していることが推測され、術側膝伸展筋力以外の因子が主観的動作評価に関与し得ると考えられた。
【まとめ】
本研究によりTKA術前および退院後の膝伸展筋力と主観的動作評価の関連が示された。しかし、その関連因子は時期に応じて変化していることが示唆された。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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