関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 127
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両側変形性股関節症における両側人工股関節置換術患者の歩行経過の報告
高橋 龍介萩原 礼紀龍嶋 裕二
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抄録

【目的】
今回我々は,末期両側変形性股関節症のため左人工股関節置換術(以下THA)を実施し,その1ヶ月後に右THAを施行した患者のリハビリテーションを経験した.手術前から1年後まで経時的に三次元動作分析によって,定量的に歩行の変化を追った.歩行データ解釈を再考する目的で比較検討した結果を報告する.
【症例紹介】
対象は,50代男性で,既往歴に右側先天性股関節脱臼があったがその他に特記すべき既往歴,合併症はない.歩行時痛を主訴にて当院整形外科に紹介され手術適応と判断された.入院期間は左右ともに術後2週間で退院となった.術前は動作時にNRS(numerical rating scale)7の疼痛がみられた.術前のROMは右股関節屈曲70度,伸展0度,左股関節屈曲70度,伸展0度で,下肢筋力はMMT5,脚長差は1cmであった.コンポーネントは,ナカシマメディカル社製を使用してcement固定で行った.
【方法】
課題は,路上における10mの直線自由歩行とし,複数回練習した後に5回測定した.体表面上に直径15mmの反射標点を両側の踵骨,第5中足骨頭の計4点に貼り付け空間座標データを計測した.歩行が定常化する4歩行周期目以降の位置に補正空間を設定し,空間内を移動する反射標点をサンプリング周波数120Hzで撮影した. 解析は,三次元動作解析装置により,1歩行周期を100%として正規化し,5歩行周期を平均した.計測した歩行速度,左右の重複歩距離,歩隔,足向角は小数点2桁目を四捨五入した.測定日は,左THA前日(以下術前),右THA退院前日(以下術後),術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月とした. 歩行速度と重複歩距離は術前の値を100%として比較した.
【説明と同意】
本研究の目的および方法について,十分に説明し同意を得た.なお本研究は,本学医学部の倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】
歩行速度と重複歩距離は,術後から術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月の順で表記し,歩隔と足向角は,術前から同様の順で表記した.歩行速度は121%,141%,138%,143%,138%となった.右重複歩距離は112%,134%,124%,129%,140%となった.左重複歩距離は110%,136%,123%,122%,137%となった.歩隔は-3.0cm,11.8 cm,10.8 cm,7.8 cm,11.6 cm,10.2cmとなった.足向角は60度,34度,48度,34度,37度,44度となった.
【考察】
術前の歩行は,歩隔が狭く足先が開いている「外股歩き」であった.しかし,THAによってアライメントが改善したことによって歩隔と足向角が改善し, 歩行速度と左右重複歩距離が術後1ヶ月までに最大の改善がみられた.今後は,本症例のデータ推移を考慮し,症例数を重ねて検討していく必要がある.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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