関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 131
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肩関節周囲炎による結滞動作困難症例に対するMTAの効果検証
宮川 裕介高田 治美豊田 輝平木 天平下河辺 雅也増田 紗嘉
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キーワード: 肩関節周囲炎, MTA, 結滞動作
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抄録

【目的】
 Myotuning Approach(以下,MTA)とは,神経生理学的現象を利用して主に筋および筋膜が原因で生じる症状を改善すると共に,筋を活性化させる治療的アプローチであると定義されている.今回,右肩関節周囲炎による疼痛が原因で関節可動域(以下,ROM)制限のために結帯動作が困難となった症例に対し,前向き研究法によるMTAの効果検証を行ったので以下に報告する.
【方法】
 70歳代前半女性.平成22年4月より結帯動作時に疼痛が出現.右肩関節周囲炎と診断され安静による加療を指示されていたが,疼痛の改善はみられなかった.その後,平成24年2月中旬に理学療法が処方された.研究期間は処方時から4週間,シングルケースA-B-A-B実験法を用いて実施した.一般的治療として肩ROM訓練,ストレッチングを実施した期間を基礎水準期(以下,A1・A2期),MTAを導入した期間をMTA導入期(以下,B1・B2期)とした.各期ともに治療頻度は1回/週,治療時間は40分/回とし,治療前後に評価を実施した.評価項目は,肩ROM測定,椎指間距離(別法:第7頸椎棘突起と橈骨茎状突起,以下C7-R),結帯動作時の疼痛をNumerical Rating Scale(以下,NRS)にて測定した.また本研究はヘルシンキ宣言を遵守し研究内容,治療計画を十分に説明し,書面にて同意を得た上で開始した.
【結果】
 A1期の右側C7-Rは治療前38cm,治療後36cm.結帯動作時NRSは治療前7,治療後6であった.B1期の右側C7-Rは治療前37cm,治療後31cm.結帯動作時NRSは治療前6,治療後2であった.A2期の右側C7-Rは治療前37cm,治療後34cm.結帯動作時NRSは治療前5,治療後5であった.B2期の右側C7-Rは治療前35cm,治療後29cm.結帯動作時NRSは治療前7,治療後0であった.尚,参考指標となる左側C7-Rは25cmであった.
【考察】
 A期ではROMに軽度の改善は認めたが,B期の方がその改善程度は明らかに大きかった.また,結帯動作時の疼痛変化においてもA期では治療前後で改善は認められなかったのに対して,B期では明らかに治療前後で疼痛の改善を認めた.これらよりMTAには,肩関節周囲炎の慢性的な疼痛に対する即時的な疼痛軽減とそれに伴うROM改善が期待できることが示唆された.
【まとめ】
 肩関節周囲炎を呈した一症例に対して,前向き研究法にて治療効果の検証を実施した.結果,MTAには,慢性的な疼痛に対する即時的な疼痛軽減とそれに伴うROM改善が期待できることが示唆された.尚,本研究は肩関節周囲炎に対する即時的な効果を検証したものであり,MTAの長期的な効果やMTAの有効な介入時期などについては検討していない.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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