関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 130
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腋窩、肩甲上神経麻痺を合併したFloating shoulderの一症例
小野田 勇人
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抄録

【目的】
Floating shoulderとは肩甲骨頚部骨折に、同側の鎖骨骨折または肩鎖関節脱臼を合併した稀な症例である。今回、本症例において観血的整復術を施行したのでここに報告する。尚、倫理規定について説明し、書面にて同意と承諾を得た。
【方法】
70歳男性。平成22年10月下旬自転車での転倒受傷により当院入院。診断名は左肩甲骨・上腕骨骨幹部骨折、左右鎖骨骨折。左鎖骨部、肩甲骨、上腕骨骨幹部に対して11月上旬手術施行。術後、入院と外来(週2回)を含め5ヶ月間理学療法行った。
[理学療法初期評価]術前の関節可動域練習は、固定のため評価は行えなかった。術後関節可動域は右肩関節屈曲40°、外転75°、内外旋動作は2週間禁止であった。MMTは右肩関節屈曲2、外転1、外旋0、内旋1。理学療法時、肩関節外転・外旋の自動運動は不可能であった。また、感覚検査でも肩甲上神経領域(C5,6)の脱失を認めていた。その結果、肩甲上神経麻痺が疑われ、筋電図を実施。棘上筋は脱神経電位(+)、随意収縮(+)、棘下筋は随意収縮(-)と完全麻痺であった。他の筋力も収縮はあるが、脱神経電位を認めた。
【結果】
理学療法開始時は、炎症に伴う筋緊張に対してリラクゼーションを中心に行ない、愛護的に他動での関節可動域練習行った。術後1週から自・他動での関節可動域練習、棘上筋のcuff exerciseなどを行った。また、ご家族に対してホームエクササイズの指導を行った。術後理学療法開始時より関節可動域は肩関節屈曲135°、外転100°、1stポジション外旋20°、2ndポジション外旋50°、内旋40°、MMTは、屈曲2、外転2、外旋0、内旋2と改善された。退院時では、更衣(下衣)動作は軽介助だったのが外来リハビリ終了時には自立となった。
【考察】
Floating shoulderは転位や合併損傷がある場合は肩上方懸垂複合体が破綻するため、体幹と上肢との連結部に不安定性を生じる場合もあり、今回観血的整復術が選択された。Floating shoulderの症例に対しては観血的整復術を行い、術後変形予防が可能となり成績良好と報告されている。術後早期に自・他動での関節可動域練習が開始出来たため、術後の拘縮予防につながったと考えられた。上腕骨骨幹部骨折や神経麻痺を呈していない症例であればより良い結果が得られたと考えられた。更衣(下衣)動作も棘下筋・後方及び上方関節包の緊張の改善、ホームエクササイズを併用した結果自立となったと考えられた。
【まとめ】
Floating shoulderの1症例を経験した。本症例を通して運動療法を実施するには解剖学と運動学を正確に理解する必要性を学んだ。今後の同症例の機能回復を推し進める貴重な資料になると推察された。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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