関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 136
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テーピングでの皮膚誘導によって片脚立位安定性が向上した1症例
横山 晋平井田 真人富田 博之土田 裕士渡辺 彩乃
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抄録

【目的】
近年,テーピングによる皮膚誘導が立位安定化に関与するという報告がなされた.今回,片側の股関節,足関節周囲筋の筋力低下によるバランス障害を呈した1症例に対し,片脚立位安定化に関与する2種類のテーピングを実施し,効果が得られたので報告する.
【症例紹介】
70歳代女性,第3腰椎圧迫骨折にて当院入院.入院時より股関節周囲筋および足関節周囲筋に筋力低下を認めた.神経症状は無く・脊柱に側彎等の変形は認めなかった.なお,発表にあたり書面および口頭にて同意を得た.
【方法】
立位安定化への関与が報告されている大腿部外側へのテーピングおよび足底部へのテーピングを左側下肢に実施.効果判定に際した評価項目は立位姿勢を前方・後方・左右側方から観察し実施前後の姿勢変化を確認,片脚立位保持時間,10m歩行とした.またテーピング非実施時も加えた3群に分類し,効果判定に使用した3項目の結果を3群間で比較した.
【結果】
テーピング無しは10m歩行9秒45,18歩,片脚立位保持15秒48であった.立位姿勢においてテーピング無しと比して足底部へのテーピングあり,大腿部へのテーピングあり共に前額面、矢状面上での姿勢の変化を認めた。また、片脚立位保持において足底部へのテーピングあり17秒90,大腿部へのテーピングあり23秒と保持時間延長を認めたが10m歩行では大きな差は認められなかった。
【考察】
テーピングの効果として,皮膚組織伸長による関節運動への効果,筋・筋膜間の滑走性向上による筋出力向上を福井らは報告している.片脚立位保持時間増加は福井らと同様,左股関節,足関節での筋出力向上,関節運動への効果による関節安定性向上と考えた.2種類のテーピング実施後は実施前と比して片脚立位保持時の骨盤左側外側動揺は軽減し,それに伴う身体動揺も軽減した.大腿部へのテーピングありと足底部へのテーピングありの差は本症例に認めていた骨盤外側動揺に対し大腿部へのテーピングがより有効だったと考える.テーピングにより大腿部外側に位置する股関節外転筋群の等尺性・遠心性での筋活動が向上し股関節の側方への関節安定性向上に作用した.また股関節の外側方向へのモーメントの制御を向上させており,足底部へのテーピングと比して本症例の姿勢制御の問題点に対し有効だったと考える.しかし,10m歩行においては動的姿勢制御課題としての難易度が高かった為,著明な効果が得られなかったと考える。今後は評価項目の課題を再考し動的姿勢制御での効果を検討していきたい.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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