関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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膝前十字靱帯再建術後早期からの大腿四頭筋に対する電気刺激の有効性
和田 健征雫田 研輔青木 幹昌畑 幸彦
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抄録

【目的】
前十字靱帯(以下,ACL)再建術後に大腿四頭筋の等尺性収縮力が低下している症例をしばしば認める.近年,このような症例に対して電気的筋肉刺激(以下,EMS)が有効とされ,術後早期からも使用されるようになってきた.
今回,われわれは, ACL再建術後早期患者の大腿四頭筋に対する術後早期からのEMSの有効性を検討する目的で,調査したので報告する.
【対象と方法】
対象は,当院おいてACL再建術を施行された患者のうち,本研究の趣旨を説明し同意を得られた12例12膝とした.手術時平均年齢は30.2歳,性別は男性6例・女性6例であった.対象に術後4日から14日まで大腿四頭筋に対しEMSを施行し,術後4日,術後1週および術後2週の時期での大腿四頭筋の表面筋電図所見について比較検討した.EMSは立体動態波治療器ステレダイネーター828を用い,内側広筋(以下,VM)と外側広筋(以下,VL)に電極を設置した.
表面筋電図は大腿直筋(以下,RF),VMおよびVLを被験筋とし大腿四頭筋の最大等尺性収縮時のiEMGを算出した.得られたiEMGを健側のiEMGにて正規化して%iEMGを算出した.また,即時的効果を検討するためにRF,VMおよびVLの同時期におけるEMS施行前後の%iEMGも比較した.
【結果】
RF,VMおよびVLにおいて有意な経時的な変化を認めなかった.
RFとVMは術後2週でのみEMS施行後が施行前より有意に大きかったが,VLはどの時期においても有意差を認めなかった.
【考察】
今回ACL再建術後の大腿四頭筋の回復に対して有効だといわれているEMSを術後2週間施行したが,経時的変化を認めなかった.しかし,EMS施行前後の変化については術後2週のRFとVMに有意差を認めた.
筋収縮に関して「術後の炎症は侵害受容器を過敏にし,他の刺激に対する侵害受容器の活性化閾値を下げる」というBeckらの報告から,術後の炎症は疼痛過敏を誘発して筋収縮を妨げる可能性がある.また炎症に関しては「術後の創傷治癒過程を4つに分類して,術後4日から6日までを炎症期と定義した」という大浦らの報告や「創傷治癒過程において急性炎症期に生じた炎症は急性炎症期以降にも持続する」という塩谷らや竹中らの報告があり,手術侵襲によって生じた炎症が術後1週間を越えて持続することは推測される.これらのことを踏まえると術後2週間まではEMSの効果が得られにくいのでACL再建術後早期からの大腿四頭筋に対するEMSは無効であると思われた.
【まとめ】
膝前十字靱帯再建術後早期からの大腿四頭筋に対する電気刺激は無効であると思われた.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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