関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 138
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当院のA型ボツリヌス毒素注射(BTX)治療の現状と今後の課題について
佐藤 恵美
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キーワード: BTX, 自主トレ, リハビリ
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抄録

【目的】
2011年10月,当院で脳卒中患者の痙性に対しBTX外来を開設した。同時にPT・OTのチームを設立し,施注前後の評価と直後から自主トレーニング(以下自主トレ)指導を行い効果を検証している。当院でのBTX治療の現状と今後の課題について報告する。

【方法】
対象は2011年10月~2012年1月にBTXを施行した外来患者6名(男性4名・女性2名,年齢64.8±12.5歳,発症年数8.3±4.8年,脳梗塞2名,脳出血3名,頭部外傷1名)。立位保持や自主トレ内容の理解が困難な症例は除外した。全症例に,ヘルシンキ宣言に基づき研究の目的を説明し同意を得た。プロトコールは,当日リハビリテーション医(以下リハ医)による診察後,PT・OTによる身体機能の評価を行う。その後施注部位・量を決定し,施注直後から統一の自主トレを指導する。評価は, MAS,上田式片麻痺機能検査(以下上田式検査), 足関節背屈ROM,表在・深部感覚検査,疼痛検査,姿勢・動作観察(起立・移乗・歩行動作,立位膝関節コントロール),10m歩行,FIMとした。評価日は(1)施注日(2)2週間後(3)8週間後とし,毎回自主トレ内容を確認し再指導した。

【結果】
MASは全例施注筋で平均1.1±0.3改善した。ROM(度)は平均膝伸展(1)5.7±5.1(2)7.9±3.0(3)6.0±4.7,膝屈曲(1)16.7±3.3(2)18.6±6.2(3)16.0±34.2。疼痛は2/2例が軽減した。歩行時間(秒)は平均(1)43.6±29.4(2)41.1±30(3)47.1±29.6。FIM・感覚・上田式検査は変化を認めず,姿勢・動作観察では立ち上がりの重心前方移動は全例改善したが,歩容改善は持続しなかった。

【考察】
施注例全例で施注2週間後,ROMや歩行時間,姿勢・動作の改善を認めたが,8週間後の評価では持続しなかった。歩行時間が短縮し、かつ歩容も改善した症例はなく,全例に立脚期の膝過伸展支持がみられた。よって,自主トレのみでは改善した機能の持続が困難と考えた。

【まとめ】
当院のBTX外来では, 多職種による客観的評価をもとに,リハ医とPT・OTが施注部位・量の決定や経時的効果について考察している。今回の研究では, 患者による麻痺のレベルや施注部位・量が異なるため画一的自主トレ指導のみではBTXにより改善した機能・能力の持続が困難であることが示唆された。そのため現在,個別訓練を開始している。今後は,PT介入による効果を客観的データのみではなく質的変化からも検証が必要と考える。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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