関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 14
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視床出血後急性期より装具療法を実施し、早期に歩行が獲得された一症例
新江 大輔大塚 功
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抄録

【目的】
脳卒中治療ガイドライン2009では急性期リハビリテーションにおいて装具を用いた早期歩行訓練が推奨されている。今回、右視床出血後、左片麻痺を呈した症例に歩行獲得を目標として長下肢装具を用いた理学療法(以下PT)により急性期病院入院中に監視歩行及び移乗動作を獲得した症例のPTアプローチと経過に考察を加え報告する。
【方法】
症例は平成24年1月、右視床出血を発症、左片麻痺を呈し当院に入院した55歳男性、病前modified Rankin Scaleは 0。入院時NIHSS12点、上田式12段階片麻痺機能テスト(以下12Grade)左上肢1手指9下肢2、感覚は表在・深部共に重度鈍麻。立位でプッシャー症候群を認めた。高次脳機能障害は注意障害と左半側空間無視を認めた。3病日より1日5単位のPTを実施。頭部CTにて血腫の脳室穿破と内包後脚へ進展が認めるが上肢に比べて下肢で回復する可能性があり、若年発症であるため歩行獲得を長期目標に、起立練習と長下肢装具を用いた歩行練習を毎日実施した。なお本症例に症例報告をさせていただく主旨を説明し同意を得た。
【結果】
3病日の離床開始より起立練習を実施し、5病日に長下肢装具を用いた歩行練習を開始した。15病日にNIHSS7点、感覚障害に改善は認めないが、12Gradeは左上肢8手指9下肢8に改善、筋緊張の亢進はなかった。移乗動作は監視となり、歩行練習は長下肢装具とサイドケインにてセラピストの監視で10m程度可能となり当院入院中の目標は達成した。16病日で日常生活自立を目標に回復期リハ病床へ転院した。
【考察】
Evidence-Based Review of Stroke Rehabilitationでは若年者は高齢者より大きな回復を示すとされ、重度片麻痺と高次脳機能障害を呈した本症例も歩行獲得を目標とした。長下肢装具を用いた歩行練習は荷重応答期に膝折れや反張膝を抑制し、股関節周囲筋の活動を促し股関節の支持性が向上したと考える。また、起立練習は非麻痺側強化だけでなく麻痺側抗重力活動やバランス能力の改善に繋がった。これらのアプローチを中心に急性期から高頻度のPTが下肢、体幹機能の向上と歩行獲得に効果的であったと考える。
【まとめ】
左片麻痺を呈した視床出血患者に対し歩行獲得を目標に急性期より起立練習と長下肢装具を用いた歩行練習を1日5単位実施し、15病日で監視歩行と移乗動作が獲得された。急性期からの長下肢装具を用いた歩行練習が下肢機能と歩行能力の改善に効果的であったと考える。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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