関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 143
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当院における基本バランス能力テストの実用性の検討-中枢神経疾患を対象に-
黒田 孟似鳥 藍子吉野 みゆき望月 久
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抄録

【目的】
バランス能力の評価にはFunctional reachや Timed up and go test、Berg balance scale(以下BBS)等が臨床において使用されている。これら評価指標の中で包括的にバランスを評価し、信頼性、妥当性が検証されているのはBBSである。しかしBBSは15分程度を要すこと、評定基準が多岐にわたり一貫性がないこと等、臨床で活用しづらい面も挙げられている。そこで10分程で実施でき、姿勢保持・重心移動・移動の区分があり、かつそれらに対して方向性を持った評価ができるとされている、望月らの考案した基本バランス能力テストに着目した。このテストで屋内歩行自立のカットオフ値は25点とされている。望月らの研究では数々の疾患によりテストを実施したが、今回このテストを当院中枢神経疾患患者で実施した際に実用性があるかを検討した。
【対象】
当院回復期リハビリテーション病棟に入院中の中枢神経疾患患者20名(女7名、男13名、年齢68.6±7.1歳(平均値±標準偏差))を対象とした。重度の認知症または高次脳機能障害を呈しており動作指示や模倣が困難な患者、入院時と調査時との間、急変などによる身体機能・精神機能の低下を呈した患者は除外した。全ての被験者には研究参加前に十分な説明を行い、ヘルシンキ宣言に沿って同意を得た。
【方法】
当院の理学療法士(以下PT)13名(経験年数1~9年)により、基本バランス能力テストを実施した。検査課題は端座位保持と重心移動、立位保持と重心移動・ステップ動作、立ち上がり動作など25項目あり、各項目を不可:0点、不安定:1点、安定:2点で評定し、合計50点満点にて採点した。次に、採点結果とFIMの移動の点数を比較した。
【結果】
患者20名に評価を実施した所、採点結果が25点以上は20名中11名であった。11名の中でFIM7・6点は9名、FIM5点は2名であった。またテストの点数が25点以下で移動自立となっている患者は0名だった。なお、FIM5点の2名中1名は病室からトイレまで(約15m)は自立となっており、他1名は注意障害・半側空間無視等の高次脳機能障害を呈しており、転倒リスクがある為自立に至っていない。
【考察】
基本バランス能力テストの結果より、屋内歩行自立のカットオフ値25点以上の11名中9名が歩行自立となっており、当院の中枢神経疾患で実用性があることが示唆された。また歩行自立を検討するには採点結果のみでなく、高次脳機能障害・認知症等を考慮する必要性も示唆された。今後症例数を増やしての調査、歩行補助具を使用した本テストの実施、採点結果が25点未満で屋内歩行自立、25点以上で屋内歩行非自立の症例検討や考察を行なっていきたい。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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