関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 185
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人工股関節全置換術後の跛行に対するアプローチ-術側遊脚後期に着目して-
近藤 佳克松本 直也
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キーワード: THA, 跛行, 遊脚後期
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抄録
【目的】
変形性股関節症(以下股OA)に対する人工股関節全置換術(以下THA)後のリハビリテーションにおいて、跛行を問題視することが多い。従来、股OAが跛行を呈する原因として、股関節外転筋の筋力低下が挙げられてきた。しかし、臨床において外転筋力の回復が図られているにも関わらず、跛行が改善しない場面に少なからず遭遇する。跛行は多因子決定の現象であるとされ、報告では外転筋MMT4以上ある患者の跛行因子は、疼痛・股関節伸展制限(5°以内)・股関節回旋筋の筋力低下が挙げられている。今回THA後、股関節疼痛が軽減し、股関節伸展可動域が規定範囲内で、外転筋・回旋筋群MMT4に達しているにも関わらず、跛行を呈している症例を経験した。この事から量的因子に加え、質的因子として、中殿筋トルク立ち上がり時の遅延が跛行の原因と考えた。中殿筋トルクの問題を、踵接地(以下H.C)時の矢状面での骨盤傾斜不良に起因する中殿筋収縮効率低下として捉えた。文献では、健常者は遊脚後期に骨盤前傾、足尖離地に骨盤は後傾していくが、股OAは患側遊脚後期の骨盤前傾が減少または後傾しているとある。患側遊脚後期の骨盤前傾減少により、股関節伸展時に有意に活動すると言われる大腿筋膜張筋の活動を立脚初期の段階で開始させると推測した。この事が中殿筋の初期からの収縮を抑制し、H.Cの中殿筋トルクを低下させる要因と考えた。したがって、H.C時の中殿筋出力を向上させる目的で、術側遊脚後期の骨盤アライメントへのアプローチを行った。
【方法】
70歳代男性。MIS THAを施行した症例。疼痛軽減が図られた、術後4週の股関節機能は、屈曲95°・伸展5°。筋力は腸腰筋 ・大殿筋・中殿筋・回旋筋群MMT4であった。歩容は、デュシェンヌ歩行を呈していた。本研究は、目的・主旨を十分に説明し、同意を得て行った。術後4週目に1.下部体幹筋伸張性の向上2.骨盤前後傾による腸腰筋促通3.壁を利用した立位での股関節屈曲訓練を実施した。訓練は歩行を撮影したのち実施。直後に再度歩行を撮影し、跛行変化を分析した。
【結果】
股関節での分離した下肢振り出し動作を促した事により、H.C時の骨盤アライメントが改善した。結果、跛行は未だ残存しているが改善を認めた。
【考察】
遊脚後期~H.C時の骨盤アライメントが、H.Cからの中殿筋収縮効率に、影響を与える事が結果より推測された。これは、遊脚後期の骨盤アライメントが、跛行を生じさせる一因となることを示唆した。
【まとめ】
跛行という現象を、多面的に捉え治療する必要性を再認識した。
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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