抄録
【目的】
腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)は、患者ADL、QOLを著しく低下させる疾患である。MRI画像診断上の重症例では、保存療法での効果が乏しいとされている。しかし現状では、MRI狭窄形態に対する理学療法の効果を検証した報告は少ない。そこで本研究の目的は、間欠跛行(以下IMC)を主訴とするLCS患者のMRI狭窄形態と、IMCの推移を調査し検討することである。
【方法】
対象は2010年1月から2011年8月までに、LCS診断を受け、IMCを主訴とし、MRIを施行した、リハビリ通院が2ヶ月以上であった32名(内訳は男性14名女性18名、平均年齢は70.8±10.1歳)とした。下肢の関節症などの他疾患や麻痺など歩行状態に影響を及ぼす症例は除外した。MRI狭窄形態の分類については、最狭窄部のMRI横断面においてSchizasの研究に則り4グループに分類した。方法は、診療録より脊椎専門医によるMRIの形態Grade分類、初診時、初診から2ヶ月後のIMC時間、理学療法内容の3点を調査した。検討項目として、各GradeにおけるIMC改善率の平均値、各Grade内での初診時から2ヶ月後におけるIMC改善者数の割合、IMC改善例に共通する理学療法内容の施行率を算出した。本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
IMC改善率では、全群にて改善率が増加する傾向が見られた。しかしGrade Dでは改善率が低い傾向が見られた。IMC改善者数の割合では、Grade A~Cでは初診時より2ヶ月後で70%以上が改善する傾向が見られた。一方でGrade Dでは改善者数の割合が少なかった。IMC改善例に共通していた理学療法は、殿筋ストレッチ、ハムストリングスストレッチ、腹式呼吸が、全Gradeにて施行率が高かった。
【考察】
本研究よりGrade Dでは改善率が低く、Grade A~Cでは70%以上に改善が見られた。先行研究において、Grade C・Dの症例では、保存療法での効果が乏しいと報告されており、Grade Dでは改善率が低く、治療効果が安定しない事が考えられる。改善例に共通していた理学療法は、骨盤可動性の改善、腹式呼吸による脊柱安定化筋群の促通があり、これがIMC改善につながったと考えられる。
【まとめ】
LCS患者のMRI形態とIMCの変化、及び理学療法を調査・検討した。Grade A~CのIMCの改善は、初診から2ヶ月時で70%以上の改善が見られたが、Grade Dでは改善が乏しかった。改善例に共通した理学療法として骨盤後傾筋群のストレッチと腹式呼吸が挙げられた。