関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 287
会議情報

脳卒中片麻痺患者に対する体重免荷トレッドミル歩行練習の経験
木名瀬 彩花上倉 洋人川ウ 仁史吉田 竣祐
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
脳卒中右片麻痺の症例に対し,歩容改善と歩行耐久性向上を目的にGait Solution Design(以下GSD)を使用した体重免荷トレッドミル歩行練習(以下BWST-ex)を行った.その結果を報告する.
【方法】
対象者は40歳代女性.左基底核梗塞により右片麻痺を呈していた.第18病日目の所見で,Brunnstrom stage(右)は上肢3,手指2,下肢4.麻痺側下腿三頭筋の筋緊張が亢進し足クローヌスは陽性であった.立位は自立レベル(Berg Balance Scale(以下BBS)47点)で,補装具無しでの歩行は監視レベル(10m歩行速度44.51m/分,歩行率89steps/分,6分間歩行232.5m)であった.歩容として,Initial Contact(以下IC)での足底全面接地やMidstance(以下MSt)での軽度膝ロッキング(疲労により頻度増加)がみられ,麻痺側立脚期は短縮していた.また,麻痺側遊脚期には足関節背屈不十分で体幹右側屈や骨盤の挙上,分廻しがみられた.歩容の改善と歩行耐久性の向上に向けてGSDを用いたBWST-exを1日に10~15分,8日間実施した.GSDは速度に応じてダンパーを変更し,免荷量は体重の20%から開始した.上肢支持なしで行える速度から開始し,最高速度は下肢が後方へ流されない速度とした.実施時間は症例の疲労感を参考にした.介助は麻痺側上下肢に加えた.治療時間以外は補装具無しでの歩行が移動手段であった.なお,症例には本報告に関して書面を用いて説明し同意を得た.
【結果】
介入2日目に下腿三頭筋の筋緊張改善が認められ,6日目には分廻しが軽減した.介入8日目(第30病日目)には足クローヌスが軽減し,BBS は55点に向上した.10m歩行速度は98.04m/分,歩行率は147 steps/分,6分間歩行は415.7mとなった(補装具無し).歩容は麻痺側立脚期の膝ロッキングと,遊脚期の体幹右側屈・骨盤挙上・分廻しが軽減した.歩行距離の延長に伴い,歩容を維持することは困難であった.
【考察】
本症例で得られた結果から,セラピスト介助によるGSDを使用したBWST-exは麻痺側足クローヌスの軽減に有効であり,それにより歩行速度と歩容の改善につながった.しかし,歩行距離が延長すると歩容を維持できないため今後は治療時間以外にもGSDの使用を継続する必要があると考える.また介入期間中も生活レベルでのGSDの使用が必要であったと考える.さらに,1日10~15分のBWST-exによる実際の歩行距離は800m~1km程度であり,更なる歩行耐久性向上に向けて練習量の増加が必要だと考える.
【まとめ】
GSD使用での体重免荷トレッドミル歩行練習は,脳卒中片麻痺患者の足クローヌス改善に一定の効果があり,歩行機能を向上させることが示唆された.
著者関連情報
© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top