関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 48
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変形性膝関節症患者の健康関連QOLに関連する要因
手塚 潤一松本 直人山口 育子長田 久雄
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抄録
【目的】
近年の医療では感染症、急性疾患を対象としたものから、生活習慣病、慢性疾患を対象としたものに疾病構造が変化している。そして、慢性疾患患者を取り巻く環境は複雑で長期にわたる治療と、その間の生活の両側面からのケアが必要である。このような変化により、医療に対するアウトカムはQOL、主観的健康感、医療への満足度、日常生活の満足度などが重要とされている。一方ICFでは、患者の健康状態に影響を及ぼす要因として、環境因子、個人因子が挙げられている。本研究では外来でリハビリテーションを継続する変形性膝関節症患者に対し、ICFの環境因子、個人因子に着目し、健康関連QOLに影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は変形性膝関節症と診断され、病院および診療所に通院する高齢者105名。調査内容は、健康関連QOLとしてSF-8スタンダード版、客観的重要度の指標として日整会膝痛疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)、主観的重症度、周辺環境満足感、趣味活動満足感、家族関係満足感、経済状況、楽観性指標、年齢、性別、他関節疾患の有無の聞き取り調査を行った。分析はSF-8スコアを従属変数、その他の変数を独立変数として重回帰分析を行った。分析にはIBM SPSS Statistics19を用いた。本研究は桜美林大学研究倫理委員会の承認を得ている。
【結果】
対象の属性は平均年齢76.5±6.5歳、男性18.8%平均年齢75.4±7.3歳、女性82.2%平均年齢76.8±6.4歳、他関節疾患はあり68%、なし32%であった。SF-8スコアとの重回帰分析の結果、標準偏回帰係数で有意とされた変数は、JOAスコア0.285、主観的重症度-0.295、周辺環境満足度0.210、趣味活動満足度0.203の4変数であった。
【考察】
変形性膝関節症に罹患し定期的な通院を余儀なくされても、自宅や周辺環境に満足し、趣味活動を満足に行えていれば、健康関連QOLは維持できる可能性がある。医療関係者のみならず、行政、地域などが協力し、高齢者が安心、安全に生活でき、趣味活動への参加を積極的に行えるような環境作りが高齢者の生活を支えるために必要な視点である。
【まとめ】
今回変形性膝関節症で加療を行っている高齢者を対象に、健康関連QOLに影響を与える要因を検討した。健康関連QOLに影響を与える要因はJOAスコア、主観的重症度、周辺環境満足感、趣味活動満足感という結果であった。変形性膝関節症を罹患した高齢者の健康関連QOLを高めるにはICFの背景因子である、周辺環境や趣味活動などの満足感を高める必要があることが示唆された。
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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