抄録
【目的】
リハビリテーションにおいて、患者の予後予測は非常に重
要である。特に脳血管障害では様々な症状を呈する。脳画像
所見より症状を予測する報告は数多くあり、放線冠の損傷部
位により単麻痺が出現する事が報告されている。(Young.
2007)
今回、発症して1か月の画像所見より左被殻から放線冠に
かけて血腫が拡大した症例を経験した。過去の報告をもと
に、下肢の運動を支配する錘体路は放線冠や内包レベルでは
障害が少ない事を画像所見から確認した。このことより下肢
の予後が良好だと推測し、リハビリを積極的に行った。結果、
下肢の機能が向上した為ここに報告する。
【症例紹介】
44歳男性。朝、救急搬送される。診断名は左被殻出血であ
り障害名は右片麻痺、高次脳機能障害、構音障害、失語症、
喚語困難を呈していた。保存的治療を行い、1か月後に当病
院へリハビリ目的で入院される。入院時ADLは移乗見守り、
歩行T字杖軽介助レベルであった。麻痺の程度はBr-stで右
上肢4、手指4、下肢5、筋力はMMTにて両下肢2~3レベル
であった。表在感覚は右足底で軽度鈍麻であった。バランス
能力の指標であるFBSは29点。リハビリ内容として積極的に
運動療法を行った。
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、患者に説明し同意を得た。
【結果】
介入2週間後で麻痺の程度は右上肢5、手指5、下肢6と分離
性が向上、筋力はMMTにて両下肢4レベルまで向上した。
FBSでは53点に上がり、下肢の動作能力の向上が見られた。
【考察】
本症例は、介入当初は、立位のバランスが乏しく、歩行能
力低下へ影響していた。今回、放線冠の下肢への障害が少な
かった為、下肢の予後は良好と判断し右下肢への訓練等を行
った結果、早期回復が獲得された。これは運動線維は放線冠
において体性局在的に配置していると過去の報告を肯定する
ものであると考えられる。体性局在的に予後予測を見立てた
リハビリ介入により、効率的なリハビリが提供できると示唆
される。