抄録
【目的】
本報告では、転倒後に生活機能が低下し、短期的な訪問リ
ハを実施して歩行、動作能力、屋内生活空間での活動が改善
した高齢の慢性閉塞性肺疾患既往者の事例を通して、訪問リ
ハの介入効果を検討することを目的とした。本研究はヘルシ
ンキ宣言に基づき、訪問リハの概要およびデータの学術的利
用について対象者および家族に対して説明し同意を得た。
【症例】
90歳、男性、慢性閉塞性肺疾患(夜間のみ在宅酸素使用)
を既往し、自宅屋内独歩、屋外T字杖歩行可能で、基本動作
能力bedside mobility scale (BMS) 40/40点、屋内生活空間
home-based life-space assessment (Hb-LSA) 59/120点で
あった。平成26年2月に転倒して胸椎圧迫骨折を受傷し、歩
行困難、BMS 22点、Hb-LSA 21点で、ベッド上の生活とな
り日中も酸素が必要となった。自宅内外の活動が乏しく速や
かな機能・活動の改善と虚弱進行予防が課題となり、要介護
3にて週3回、40分/回の訪問リハを開始した。訪問リハ開始
時は連続歩行距離9m(要介助)、歩行前後でSpO295%から75
%へ低下、歩行自己効力感modified gait efficacy scale(mGES)
10/100点であった。
【経過】
平成26年4月までの1か月間で計15回の訪問リハ(呼吸運動、
起立・立位練習、歩行練習)を実施した結果、連続歩行距離
65m(T字杖/伝い歩きにて自立)、歩行後のSpO2は94~97%
を保てる状態になるとともに、歩行自己効力感もmGES47点
へ改善した。また、基本動作能力はBMS39点とほぼ自立レ
ベルへ改善し、屋内生活空間での活動もHb-LSA37点へ向上
した。
【考察】
本症例は、転倒後に訪問リハを実施した結果、歩行の自立
度と持久性が改善したことによる歩行自己効力感の向上と基
本動作能力の改善によって、屋内生活空間での活動の向上が
得られたと推察された。屋外活動が困難な超高齢の慢性閉塞
性肺疾患既往者において集中的な訪問リハと歩行の改善が屋
内生活空間での身体活動向上に重要であると考えられた。