主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation;FES)は、脳卒中や脊髄損傷などによる筋力低下・歩行障害に対して、その効果が示されており、理学療法ガイドラインにおいても推奨されている。今回、腰椎脱臼骨折に伴う運動障害に対し、運動療法にFES を併用した結果、改善が得られたため、報告をする。
【症例】40 歳代男性。2015 年12 月、10m の崖から60t ダンプカーごと転落。同日他院にてC4 椎体骨折、L3/4 脱臼骨折、L2、L4 椎体骨折、L2-3 棘突起骨折、L1-3 横突起骨折の診断。同日L3/4 後側方固定術、L1-3 およびL5-6 後方固定術施行。術後38 日、当院回復期リハビリテーション病棟入院。なお、本症例には発表について説明し、同意を得た。
【初期評価】徒手筋力検査(MMT)(右/左):膝関節屈曲4/4 、伸展4/4、足関節背屈 0/0、底屈0/0、足趾屈曲0/0 伸展0/0 両側短下肢装具使用にて平行棒内歩行1 往復軽介助レベル。
【治療経過】FES には日本メディックス社製M-STIM1010 を用いた。術後52 日より刺激周波数40Hz、通電6 秒、休止15 秒、強度は刺激痛の少ない範囲、部位は前脛骨筋と腓腹筋とした。時間は1 日30 分間とし、左右交互に毎日実施した。術後60 日より両側の前脛骨筋へ部位を変更した。術後67 日より左前脛骨筋、長腓骨筋に変更した。術後90 日にFES 終了とした。
【結果(術後111 日)】MMT(右/左)膝関節屈曲4/4、伸展5/5、足関節背屈5/5、底屈3/3、足趾屈曲4/4、伸展4/4。
独歩可能、日常生活動作は全て自立し、術後112 日に自宅退院となった。
【考察】物理療法は、補助・併用療法として推奨されている。FES は合併症を起こさずに運動療法と併用できたため、本症例のように筋力と動作能力の向上に寄与したと考えた。