関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-121 一症例のQOL 向上を目指した訪問リハビリテーションの取り組み
宮本学
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p. 121-

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抄録

【目的】 訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)に携わる者として、食事と排泄の介助困難は利用者とその介助者からよく聴取される。今回、重度の嚥下障害から胃瘻造設、また排泄コントロールが困難となった症例に対して症例自身のQOL 向上を目的としたアプローチを実施し、結果ADL 向上に繋げることができた。尚、本報告については対象者および家族に対して説明し同意を得た。

【症例】67 歳女性。平成5 年に日本脳炎によるてんかん発作を発症。その後、在宅生活に戻られるが退行の出現、認知面の低下から訴えなどの表出が困難になり徐々にADL 低下。平成25 年に転倒をきっかけに訪問リハ開始。生活機能は昇降式椅子坐位レベルであり歩行練習は可能であったが、平成26 年12 月大脳皮質基底核変性症、多発性脳梗塞を発症、また誤嚥性肺炎から経口摂取が困難となり胃瘻造設となる。2 か月後に退院となるが意欲の低下がみられ、歩行も主介護者の夫と二人介助で行う状況であった。訪問リハ開始時のBarthel Index(BI) は5 点であり食事がなんとか可能。入院後は上述通り、胃瘻となってしまったためBI は0 点となる。また介護用ベッド導入となっている。

【経過】 退院後の意欲低下原因として経口摂取の訴えがあったことを夫より確認。担当ケアマネージャーを通し、係り付けの病院の主治医より嚥下造営目的で1 週間入院し、お楽しみでゼリーの摂食が可能となった。退院後はゼリー摂食時での姿勢の注意点を書面とし、訪問看護も週1 回で介入していたため、一口量の調整等も加え、他職種との連携も図った。結果BI は15 点となり、姿勢調整も影響し排泄コントロールにも繋げることができた。

【考察】本症例は意識清明であるために経口摂取ができないことから意欲が低下し、結果ADL 低下を呈してしまった。退行、認知症があり通常の会話が困難になっても利用者の主訴を確認することで運動療法以外に着手したことがADL 向上に繋がったと推察する。

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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