主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】近年、歩行中の携帯電話操作に伴う事故の危険性が指摘され、携帯電話操作を伴う歩行では歩行速度や歩行安定性が低下することが報告されている。本研究の目的は、歩行中の携帯電話操作が歩行と携帯電話操作課題の双方のパフォーマンスに及ぼす影響を検証するとともに、歩行路における障害物の有無による差異について検討することとした。
【方法】健康な若年成人40 人 (平均20.8 歳) を対象に、縦20m、幅1m の直線歩行路での3 分間連続歩行を、歩行中の携帯電話操作課題 (計算課題アプリケーション) の有無と歩行路の障害物 (高さ0.7m、底面0.3m 四方の円錐状、直線歩行路10m 地点中央に設置) の有無を組合せた計4 条件にて実施した。主な測定項目は、3 分間歩行距離 (3MD) とともに、3MD における合計歩数、10m 区間毎の平均歩数および平均歩行速度とした。また、静止立位条件または携帯電話操作課題を伴う歩行条件で行った計算課題の解答総数、正答数および正答率を測定した。
本研究は対象者に研究の概要を説明し同意を得て実施した。
【結果】 歩行に関する測定項目を二元配置分散分析にて比較した結果、携帯電話操作課題の付加による有意な主効果が認められ、携帯電話操作課題有り条件では無し条件と比べて、3MD、3MD における合計歩数および平均歩行速度の有意な低下と平均歩数の有意な増加を示したが、携帯電話操作課題と障害物の有無による交互作用は認めなかった。また、携帯電話操作課題の成績を条件間で比較した結果、携帯電話操作課題を伴う歩行条件では静止立位条件と比べて、解答総数、正答数および正答率が有意に低い値を示した。
【考察】 携帯電話操作課題の付加は、歩行とともに歩行中の携帯電話操作課題のパフォーマンスの低下を引き起こすことが示唆された。また、健康な若年者では必ずしも歩行路の障害物による明らかな動作制限を起こさずに、携帯電話操作課題を伴う障害物歩行を遂行し得ると推察された。