主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】固定点への軽い指先接触(light touch: LT)で立位姿勢動揺が減少することが報告されているが、接触方向の相違による影響は明らかではない。本研究の目的は、健常成人を対象にLT の接触方向が立位姿勢動揺に及ぼす影響を分析することである。
【方法】対象は右利きの男性19 名(27.2±5.6 歳)とした。閉脚立位にて、上肢下垂したNo Touch(NT)条件、大転子の高さの水平面に接触するLT 条件、右肘関節90°屈曲位で前方の水平面に接触するHorizontal LT(HLT)条件と前方の垂直面に接触するVertical LT(VLT)条件の4 条件と、開閉眼の計8 条件とした。計量器KS-243(DRETEC 社)を用いて、右示指で1N 以下の接触を維持した。測定は重心動揺計G-7100(ANIMA 社)にて30 秒間(20Hz)、パラメータは総軌跡長、前後・左右方向速度のroot mean square(RMS 速度)とした。統計処理は、視覚条件別に反復測定一元配置分散分析と多重比較を行い、有意水準は5%とした。本研究は榛名荘病院倫理委員会(承認番号
150102)にて承認されている。
【結果】総軌跡長(cm)の平均値±標準偏差は、開眼でNT が36.5±9.7、LT が28.1±6.7、HLT が25.9±5.7、VLT が25.4±5.7、閉眼で各49.5±9.2、37.1±10.1、35.5±8.3、35.7±9.3 であった。RMS 速度(cm/s)の前後方向は、開
眼で0.95±0.24、0.74±0.16、0.64±0.17、0.64±0.15、閉眼で1.33±0.27、0.99±0.31、0.86±0.23、0.91±0.26、左右方向は、開眼で1.10±0.32、0.83±0.22、0.81±0.18、0.78±0.19、閉眼で1.44±0.31、1.11±0.32、
1.11±0.28、1.08±0.31 であった。全パラメータで分散分析にて有意差を認め、接触方向の影響では開眼時のRMS 速度の前後方向のみ有意差を認めた。
【考察】健常成人において、前方の垂直面に対するLT は前後方向の動揺を有意に減少させることが示唆された。脊椎脊髄疾患患者などの下肢に障害を有する対象では、LT の接触方向の影響は健常成人と異なる可能性があり、今後検討予定である。