関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-153 介護職員との連携により生活機能を長期間維持している超高齢者の一症例
松岡勇太林悠太
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p. 153-

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抄録

【目的】今回、介護付有料老人ホーム入居中の超高齢者が、大腿骨転子部骨折受傷後の機能訓練によって生活機能に向上が認められ、その後、介護職員との連携により長期間維持された症例を経験したため、報告する。なお、本報告は対象者と家族に対し、ヘルシンキ宣言に沿って報告の主旨および目的の説明を行い、同意を得た。

【症例】対象は、104 歳、女性、要介護2 で、アルツハイマー型認知症を呈している。平成25 年9 月5 日に当施設内にて転倒し、左大腿骨転子部骨折を受傷した。翌日に観血的手術を受け、同28 日に退院した。退院時、ピックアップ歩行器(前輪キャスター付)を使用し40m程度を見守りで歩けたが、歩容やアライメントの不良、疼痛が認められたため、転倒リスクが高いと判断し車椅子移動を選択した。その時のfunctional independence measure の運動項目

(mFIM)は57/91 点であった。

【経過】PT による機能訓練は、退院後1 ヶ月間は歩容の改善・歩行量の増加を目的とし、週3~4 回の頻度で実施した。その結果、居室内は独歩自立、居室から食堂までは介護職員見守りの下、ピックアップ歩行器(四輪キャスター付)にて歩行可能となった。mFIM は81/91 点まで向上した。 その後は、週1 回の機能訓練に加え、介護職員見守りの下、週1 回の屋外歩行や40m程度のフロア内の廊下を日常的に5 往復以上歩いている。転倒はなく、mFIM も

81 点を維持している。介護職員には、日々の活動量の重要性や本症例の対応方法を書面や口頭にて指導し、転倒予防と活動量の確保を図っている。

【考察】介護付有料老人ホームにおいて、退院直後のPT の早期介入、介護職員との連携による活動量の維持・増加によって、その後の生活機能の維持・向上につながることが示唆された。PT の役割は、個別での機能訓練の介入だけでなく、環境設定や福祉用具の選定、さらには介護職員への指導も重要になると考えられる。

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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