関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-173 意識的に身体動揺を小さくすることで重心制御法は変わるのか?
宮澤拓国分貴徳小平寛岳瀧谷春奈金村尚彦
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p. 173-

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抄録

【はじめに】立位姿勢の保持は無意識・無自覚下で行われるが、われわれ理学療法士は対象者に自己の姿勢に意識を向けるよう指示を与えることがある。しかしそれが制御系にどのような影響を及ぼすか明確でない。本研究では動揺を最小限にするように指示を与えた立位での足圧中心(COP)動揺を解析し、意識的に制御できるパラメータの有無を探り、治療介入の根拠を得ることを目的とした。

【方法】健常成人10 名(21.1±0.7 歳)を対象とし、重心動揺計(ユニメック社)上にて30 秒間の立位保持を行い、COP 動揺を計測した。自然状態での立位保持を行った後、意識的に姿勢動揺を最小限に留めるよう指示を与えて立位保持し、各条件で開眼と閉眼各4 回行った。COP 動揺の評価指標として、外周面積・加速度の標準偏差(SD)・stabilogram diffusion analysis(SDA)によるハースト指数 (Hs,Hl)を算出した。統計解析は開閉眼×自然・意識下で二元配置分散を行った。

【結果】いずれの評価指標においても動揺しないように意識した立位で有意な変化はみられなかった。視覚に関しては閉眼により外周面積は増加、Hs は増加、加速度SD には有意な変化はなかった。

【結論】COP 解析から立位姿勢の制御特性を推測できる。加速度SD の低さは一定したCOP 制御、Hs,Hl はCOP の確率論的なふるまいを短・長時間領域での制御の安定性として解釈できる。身体の揺れを少なくするよう意識することではこれらの制御には変化が生じず、視覚の有無で変化がみられた。立位保持は多数のシステムの交互作用で無意識下にて行われるものである。動揺を小さくするように意識することでは制御の変化はみられなかったことから、無意識下でも姿勢を安定できるような身体環境を整える治療介入が望ましいと考えられる。

【倫理的配慮、説明と同意】被験者に対し計測前に研究趣旨と内容を説明し同意を得た。本研究は埼玉県立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(倫理審査番号26104)

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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