関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-178 安静立位時の暗算課題が先行随伴性姿勢調節と右上肢挙上の反応課題に及ぼす影響
坂本禎典井口正樹
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キーワード: APAs, 安静立位, 二重課題
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p. 178-

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抄録

【目的】立位での右上肢挙上は、先行随伴性姿勢調節(APAs)として頭上から見て時計回りの垂直トルク(Tz)が起こる。また、立位での認知課題は姿勢制御の自動性を高めバランスが向上する。この二重課題下で反応課題を行うと、主動作は遅れるがAPAs はさほど影響を受けないと言われるが、詳細は不明である。本研究の目的は、Tz を用いて、立位時の暗算課題がAPAs と主動作にどう影響するか検討することである。

【方法】健常人11 名(26.2±4.8 歳)は、安静立位の対照条件(C)、音刺激を合図に右上肢挙上の反応課題を行う単一課題条件(S)、暗算課題中に反応課題を行う二重課題条件(D)の3条件下で立位を保持した。足圧中心(COP)とTz は床反力計で、上肢の運動は角速度センサーで計測した。反応課題前のCOP 分散と、反応課題に伴うTz 開始時間と最大Tz、それに至るまでのスロープ、上肢挙上開始時間とその最大角速度を、α=0.05 で条件間比較した。なお、本研究は倫理委員会の承認を得た上で、被験者に同意署名を得た。

【結果】立位時のCOP 分散はl6.4mm<SUP>2</SUP>、13.3mm<SUP>2</SUP>、8.6mm<SUP>2</SUP>であり、CS と比較してD で減少した。Tz 開始と上肢開始はD でS より遅れたが、Tz 開始から上肢開始までの時間もD の方がS より長かった(上肢開始-Tz 開始=65.8msec と113.2msec)。最大Tz にSD 間で差はなかったが、Tz スロープはS よりD で減少した(24.5Nmm/msec と18.9Nmm/msec)。

【考察】APAs はフィードフォーワード的制御でありながら、暗算課題で有意に遅れ、またTz スロープも減少した。暗算課題が、静的バランスは向上させるが、動的バランスには不利に働くことが示唆され、臨床の転倒予防訓練などへの応用が考えられる。

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© 2016 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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